1-4
先生が教室を出ると、教室のネズミたちはほっと安堵の息を漏らしました。
「あぶないとこだったなフォル!」
教室の誰かがそう叫びました。
「いやあなに、あれぐらいはどうってことないさ」
フォルの周りを多くのネズミたちが取り囲んでいきます。
緊張が和らぎ、テーマパークのように騒がしくなった教室の片隅で、トルエは心底不機嫌な顔をしていました。実際にはフォルが登場した頃には、授業はほとんど終わりかけではありましたが、彼にはフォルが現れてからの数分間が、何時間分もの喪失に感じられました。さっきまで彼の目の前に見えていた真理へと至る道は、今ではどこかへ散りじりに霧散してしまって、どう頑張っても、もう二度と見つけられないような、そんな感じがしました。
それで彼は半ば放心したような状態になりながら、その場でじっと動かずに座っていました。そんな風でしたから、後の講義は全然トルエの頭に入ってきませんでした。さっきまでの興奮は熱を奪われて、あとに残ったものは脱力感だけでした。
一方で、休みの間中フォルの周りにはいつも多くのネズミたちが群がっていました。フォルは彼らに冗談を言ったり、最近の出来事を聞かせたりして、大いに楽しませてやることが出来ました。彼らはフォルのように破天荒で型破りな態度を取ることはおっかなくて、とても出来ませんでしたが、だからこそ彼を羨み、憧れに近いとも言える感情を抱いていたのです。
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