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しばらくして、ようやくビスも走り終えました。彼はぜえぜえと息を切らして、ほとんど倒れ込むようにして座りました。先生はビスのところまでやってくると、少しもの悲しそうな顔をして、
「今度からはもっとはやく走れるようにがんばろうな」
と、言いました。
先生が離れていくと、先ほどビスのことを笑っていたネズミたちは、ビスのことを取り囲んで、にやにやと見つめました。ビスは息が上がり視界も霞んで頭はひどくぼんやりとしていたので、俯きながらその場でじっと座っていました。
すると、ビスを取り囲んでいた内の一匹が、彼のしっぽを思い切り齧りました。彼は痛みでぎゃっと叫びを上げましたが、瞬時に口を塞がれてもごもごと苦しそうにもがくことしか出来ませんでした。それから彼を囲んでいたグループは素知らぬふりで他のネズミたちの所へと戻っていったのです。何匹かのクラスのネズミはその瞬間を目撃していましたが、敢えて先生に報告をしようとするものは、一匹もいませんでした。
彼はしっぽのヒリヒリとした痛みと疲労とで、段々と涙がこみ上げてくるのを感じました。後には悔しさと一緒に、激しい吐き気が襲ってきます。しかし彼は自尊心からその場では涙を流すことをぐっと堪えて、先生にこう伝えました。
「せんせいすみません。お腹が痛いのでお手洗いにいってきます」
「大丈夫か? 無理はしないようにな」
ビスはそんな先生の言葉を聞くのも待たずに、グラウンド横にあるトイレへと駆け込んでいきました。
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