【特別編】統合失調症の人との接し方




 もう、どこを見ても、何を見ても書いてあることがある。


「統合失調症は100人に1人発症する」


 これ本当かよ。何のデータなのよ。いつのデータなのよ。私の夫以外ではネット以外で見たことないぞ。

 と、思いつつも、多分ひきこもってるか精神病棟に入院してるか薬飲んで持ち直して仕事してるか事件起こして刑務所にいるかどれかだから分からないんだろうなと思う。


 で、私の夫がかなり重症な妄想型統合失調症(で事件起こして裁判になって刑務所入ってる)。


 正直、普通の人の想像を絶する理解のできなさ。

 私は大学で心理学科だったから統合失調症の予備知識はあったけど、そんな本の知識なんて大して役に立たない。

 予備知識はあっても、具体的な接し方って治療をする医者も色々だし、何が正解かとかは分からない。


 でも、私が夫と接してて上手くいってる方だと思うので、どう接しているか書いていこうと思う。


 1.妄想を肯定しない


 妄想(事実ではない事)を肯定すると、本人がますます妄想に確信を抱いてしまうので、絶対に肯定してはいけない。


 2.妄想を否定しない


 は? じゃあどうやって会話するんだよってなるよね。

 私もなってるけど、肯定もしないし否定もしないっていう話し方をする(後で話す)。


 なんで否定しないのかというと、妄想は本人が確信して話していることもあるので、それを頭ごなしに否定してしまうと関係にヒビが入る原因になる。


 私が精神科医に


「統合失調症の人にどうやって接するのがいいんですかね」


 っていう話をしたときに


「僕がまだ若い頃に、統合失調症の人が頭に機械が入ってるって言ってて、“電気はどこからとってるの?”って聞いたら全然話をしてくれなくなっちゃった(笑)」


 とか言って笑ってたけども、多分そうなる。


 理屈上それはありえないってことでも、本人はそう確信しているので理詰めで話しても本人的には「自分の話を信じてくれない人・聞いてくれない人」ってなってしまって、信頼関係を築く間もない。

 信頼関係がないと上手くいくはずないから。まずは信頼関係の構築から。


 私がしてる話し方は、肯定はしないし否定もしないから「そうなんだ(相槌)」とか「それは私は分からない」とか、無理やり話を逸らすとか。

 いやいや、それで会話成立するんかいって感じだけど、絶対に妄想を肯定したり否定したりはしない。それだけは絶対に気を付けてる。


 夫としては私が肯定しないから怒ったりしたことも1回あったけど、なんだかよく分からない着地の仕方をして本人は納得して機嫌を直してくれた。

 私は「(???)」ってなってたけど、夫は納得して機嫌を直してくれたので良かったと思う。


 妄想の中の話をされても、理解が全くできないのでうんともすんとも反応できないことがある。

 上手い例えができないけど、本のページを飛び飛びに読まされてる感じ。

 いつまで経ってもその空白のページがないからなんでそうなってるのか理解できないみたいな感じ。

 私の夫はIQが110以上あるので、尚更私には理解できない話をしてくる。

 一体彼はどんな景色や世界を見て生きているのだろうか。


 妄想があるのはけしていい事ではないけど、突拍子もないことを言い出すので刺激的で個人的には嫌いじゃない。


「え!? どういうこと!?」


 って内心驚きパニックになりながらも「そうなの?」とか「なんで?」「そうなんだ~」って話をしていく。


 肯定を求められたときは「分からない」「知らない」って言う他ない。

 それについては本人も「■■■(私)のところだけいかなかったのかな……?」とか解釈してた。これは信頼関係があるっていう前提がないとそうはならない。とにかく信頼関係を気づくこと。

 大丈夫、真摯に本人に向き合えば、ゆっくり心を開いてくれるはずだから。


 とにかく否定も肯定もしない話し方は難しいけど、それは頑張ってほしい。

 頑張って信頼を勝ち取ってほしい。


 3.本人が心を開いてくれるまで待つ(無理やりに接しない)


 私の夫はそうだったけど、最初の頃は全然心開いてくれなかった。

 今もまだ心のどこかでは疑ってると思う。

 でも、根気よく待つ。

 放置するのとは違うよ。こっちから手を差し伸べつつも、その手を掴んでくれるまで待つ。

 本人を丸め込まない。自分の倫理観を振り翳さない。世の中の常識を押し付けない。

 そしてそれを継続していく。


 1回心を開きかけてくれても、それっぱなしになったら意味がないのでなるべく本人の意思を尊重しながら接していく。

 私の夫の場合は周囲との繋がりを持とうとしないタイプだったから、尚更こうなっちゃったんだろうな……って思う。事件前に私と知り合えていても、事件は防げなかったのではないかと感じる。


 4.必要な場合、本人がどれだけ拒否しようと通院、入院させる


 これはね……本人がどれだけ嫌がっててもこれだけはやらんといかん。

 私はやったことないけど、薬を飲んだり治療をしないと悪化していくので絶対に医者にかかりましょう。

 病識がなくて本人が死ぬほど嫌がるだろうけど、でも放っておくと大変なことになるので、それだけはしっかりしないと駄目。

 放っておくと、私の夫みたいに事件になっちゃったりすることもなくもないから。


 5.薬の管理は本人に任せない


 薬をちゃんと飲まないとイカンので、本人に任せたら駄目。

 病識がないと尚更薬を飲みたがらない。でも、薬をちゃんと飲ませる。保護者が観てるところで飲ませてちゃんと飲んだか確認する。後でトイレとかで吐き戻してないかも見てた方がいいかもね。


 私の夫は薬を飲んでいるときは、支離滅裂な話にまとまりが出てきて普通の話ができるようになった。それでも妄想は残ってる。

 拘置所のときは妄想の話をずーっとしてたけど、服薬するようになって世間話ができるようになった。

 服薬して陽性症状が少し落ち着いた夫は、以前の激しいときとは打って変わって大人しくなり、治療前は妄想の話を25分ずーっと喋りっぱなしなときがあるくらい饒舌だったのに、治療が始まってからは彼はあまり喋らなくなった。

 私もあまり普段から喋る方ではないので、会話には四苦八苦しているところもあるが、もう付き合いも長いので普通に世間話をしたりしてる。


 6.病識がない場合は統合失調症の話をしない


 本人は妄想を事実だと確信しているので、病識をなんとか持たせようとしても投薬なしに理屈で理解させるのは無理。

 私の夫は特に「統合失調症じゃない」と強く主張していた(いる:現在進行形)ので、統合失調症の話を今まで一切してない。

 もう夫とは随分付き合いが長いが、その付き合いの長さで1回もその話をしていない。

 あ……いや……障害年金の下りの時に年金を主体にして1回だけ話した。でも、すごーくサラッと話したけど、あのときは年金が主体だったからほぼ話してない。

 多分、どんなに丁寧に腰を低く言っても、本人には理解してもらえない。

 だから、最低限、どうしても話さなければいけない場面以外は病気の事について触れない。


 こんなところかな、私が気を付けて話してるところと言ったら。

 他にも妄想型ではなく、破瓜はか型とかもあるけど、それは接したことがないので分からない。


 色々種類もあるけど、何よりも本人の気持ちを考えてあげてほしい。

 一応病名として「統合失調症」という病名はついているけど、それをひとつの個性として捉えて、本人の為に尽力してほしい。

 周りの人も十分苦しいと思う。でも、1番苦しんでいるのは本人だから。


 早期に治療を始めれば予後も良くなるから、異常を感じたらすぐに病院に連れて行ってあげて。



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刑務所とか拘置所とか裁判所の内話 毒の徒華 @dokunoadabana

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