裁判での家族の役割
詳しいことは国選弁護人か、私選弁護人から聞かされると思うけど、刑事事件の家族の立ち位置は情状証人という立場だと思う。
私は裁判の傍聴に何度も行って聞いてきた。
どの刑事裁判でも家族は主に被告人の監督をすることを弁護人や検察官に聞かれる。
・被告人が今後このようなことがないように監督できるか、どのように監督するか
・被告人が事件を起こす前に変調はなかったか、気づかなかったのか
という趣旨のことを聞かれているのを見かける。
家族に対してはあまり弁護士も検察官も突っ込んだ質問をせず、あっさり終わる事も結構ある。罪名によると思う。
重い罪の裁判はあまり傍聴したことがないが、殺人未遂の被告人の妻と娘が情状証人で呼ばれていた裁判を聞いていた時は
・被告人は普段どのような人物か
・今回の事件を聞いてどう思ったか、知っていたか
とか、主に被告人に執行猶予判決を求める時に監督できそうかどうかを聞かれる。
(因みにこの殺人未遂の裁判は執行猶予つき判決になった。私個人が聞いていて、被告人は時折ヘラヘラ笑っていて全然反省しているようにも見えなかったし、犯行動機もかなり身勝手だったけど、それでも執行猶予つくんだなぁと思った)
あとは……教師(男)が生徒(女)に手を出した事件で、被告人の母親が証人として呼ばれていた時は被告人は針の
その被告人の母親は
「おかしいと思います」
と言っていた。
刑事事件の被告人は一審では必ず出廷しているので、同じ空間でその言葉を聞かなければならない。
確かに未成年者に手を出した被告人は日本の法律で許されないことをしたと思う。
でも、私は色々な裁判を聞いたり色々な人間関係を見ていて思うのだが、性癖というのは本人の意思とは無関係なものだと思うので、それを簡単に「おかしい」と言うのはちょっとどうなんだろうかと私は感じた。
被告人は実母に「おかしい」と言われて泣いていた。公然の前で実母に自分の性癖を否定されたら泣きたくなるのも仕方ない。
私はたまたま小児性愛者ではないのでそのことで苦しんでいないが、小児性愛者は小児性愛者なりに色々苦しんでいると思う。
薬物もそうだが、本人の意思だけでどうにかなるものではないと感じる。
別の強制わいせつの被告人の裁判を聞いていた時に、性欲を落す薬を処方してもらって飲んで性欲を抑えていると言っていた。
私は女だからなのか、あるいは個体的な問題なのかは分からないけど、性欲は強くなく、殆どない。
だから男性の強制わいせつ系の裁判を聞いていてもピンとこない。
中には急に後ろから襲い掛かって強制わいせつしたりしてる人もいたけど、いきなり知らない人に後ろから襲い掛かって性欲を満たそうと思ったことがないのでその感覚は分からないが、本人も抑えきれない性欲で何かしら苦労しているのだろうなと、裁判を聞いていると思う。
苦労しているからといって勿論襲い掛かって良い理由にはならないが、そういうものを持っている本人自身が悪い訳じゃない。衝動に対する犯罪行動の抑制ができないのが悪い。
だから、もし身内が事件を起こしてしまったときは「おかしい」と一蹴するのではなく、本人の本性に寄り添って発言してあげてほしい。
他者の不手際を批難するのは簡単だけど、何故そうなってしまったのか根本的な事が分かっていないと解決にはならない。
巻き込まれた身内の人は気の毒に思う。被告人の家族も批難されることは私も知っている。だから本人に強い批難を浴びせたい気持ちも分かるが、まずは落ち着いて。
何が本当に再犯に繋がらないか真剣に本人と向き合って考えてほしい。
拘置所に入ってる本人と向き合うには面会に行って、手紙を書いて意思の疎通をするしかない。
拘置所に通うのは大変だけど、本人は一人で心細い思いをしているし、面会に何度も行ったり手紙を書いたりすれば、弁護士がそれを法廷で裁判官に言ってくれるから、少しは被告人の有利になると思う。
被告人にとって戻る場所があるかないかというのは重要な問題だ。
拘置所で並んで待ってる間、色々な人を見てきた。
でも、一様に皆、拘置者のことを案じている。毎日面会に行く人もいる。
それとは反対に、逮捕された途端に縁を切りたがる人もいる。
法廷に出るには勇気がいる。
有名な事件な程、傍聴人もくるし記者も来る。
無理強いはできない。
ただ、被告人になってしまった本人のことをよく考えてほしい。
何より家族に考えてほしいのは、本人が犯罪行為に至ってしまったことにあなたは何の責任もないのかということ。
事件を起こした被告人が当然悪いけれども、被告人にしてしまったあなたは何の責もないのかということを考えてほしい。
善人はすでに救われている。だから手を差し伸べるのは悪人からだと、『MOTHER3』を作った糸井重里さんが言っていた。
私もそう思う。
悪人に手を差し伸べる人がいなければ、ずっと彼らは淀んだ下層から出ることはできない。
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