受刑者とのうまい距離感
受刑者との結婚は上手く行かないらしい。
まぁ、受刑者とじゃなくても上手く行ってない人は沢山いるので、一概に「受刑者だから」と片付けられるものじゃないと思うけど。
でも、確かに受刑者と上手く行かないのも納得できる理由がある。
1.月の面会回数は決まっている
2.月の手紙の枚数や回数も決まっている。手紙なのでタイムラグがあるし郵便料金も馬鹿にはならない
3.平日仕事の人は有給休暇をとって面会に行かなければならない
4.収容されている刑務所が近場とは限らない
5.面会時間も決められている
6.受刑者とは指一本触れることはできない
うん。
こんなんで上手くやってる方がおかしいだろって自分でも思うけど、私と夫は上手くやってる。
上手くやれてるポイントをいくつか紹介するけど、こればかりは自分と相手次第だからあんまり参考にならないかも。
私たちの場合は
1.私が「自主的に」手紙を書いたり、面会に行ったりしている
つまり、受刑者から「会いたい」「来てほしい」「手紙がほしい」のクレクレ行為がない。
そんなの言われて嬉しいのは最初だけ。
こういうのは相手から求められて続けるのはしんどい。自分が納得してやっている行動じゃないと続かない。
会いたいとか来てほしいとか言われても、有給全部突っ込んで会いに行かないといけないのでどうしても面会日数は限られてくる。それ以上は求められても無理。
面会に行けない分、手紙は毎週のように出してた。日記みたいに書いて、出している。
今は2週間に1回に減らした。それも私の夫の性質上……私の手紙を全部取っておいているらしく「読み終わったら捨てていいよ」って言っても捨てようとしないで「後で家に送るから」と言われているから。
なんというか……
それに、刑務所では半年に1度、房を変える転房がある。その度に私の大量の手紙を持ち運んでいるのかと思うと可哀想なので、少し手紙のペースを落とした。
それでも会いに行ってるし、手紙もほぼ毎日書いてるので飽きている訳じゃないよということは伝えている。それは分かってくれている。
2.無理な要求をされたらきちんと断る
これね。
断ったら気まずくなるかもしれないと思って何となしに言う事聞いちゃってるうちに、要望が大きくなってくる。
受刑者にとってはあなたしか頼りにできる人がいないとなると、その要求は必然的に大きくなってくるのは普通だと思う。でも、できないことは「できない」ってはっきり言う。
私の夫はお金をクレクレしてこないけど、漫画をさし入れてるのでその返送代としてお金は差し入れてる。
他の頼みはされたりするけど、できないことはできないとはっきり言ってる。
3.お互いに負担になるような要求はしない
結局、同じようなことになるけど、私は週一とか、二週間に1回とか手紙を出してるものの、夫から返事が来ることの方が稀だ。手紙が来るとびっくりするくらい返事が来ない。
でも「なんで手紙の返事くれないの!?」とか「切手分くらいのお金は渡してるじゃん!?」とか言ったら関係はすぐ破綻するので、言わないし、別に思ってない。それが普通だと考えを改める。
受刑者はお金をそれほど多く持っていないので、手紙一通送るにしても切手代、封筒代、便箋代……色々お金かかるから。無理強いしたらいけない。
向こうも私に多くを求めてこないし、私も夫に多くは求めてない。夫は「遠いところごめん」って言って気遣ってくれる。
だから上手くいってる。
4.約束は守る
これはどういうことかというと、手紙で「●●月●●日に面会行くね」という話をしたら、それを守る。
「当たり前じゃーん」って簡単な事のように思うけど、しょっちゅう約束破ってたら信頼関係にヒビが入るから。
それに、すぐ連絡が取れない分、会いに来るって言ってる日に来ないと中の人はかなり不安に思ってしまう。
だから、どうしようもない事態に陥ってどうしても行けなくなってしまったら、速達か何かですぐに知らせた方がいい。心配させちゃうからね。
小さいことの積み重ねで信用って崩れていくから、些細な事でも「ごめんね」とか「ありがとう」とか言った方がいい。
5.恩着せがましくしない
受刑者と外の人、外の人の方が偉いみたいな感じに思って恩着せがましくすると失敗する。
あくまで、面会にいくのも手紙を書くのも善意でやってることと考える事。
出所するまで待ってるからねという暖かい言葉をかけるのが吉。
6.事件の事を責めるようなことは言わない
事件のことにはあまり触れないようにする方がいいかも。
それは世間様が散々責めているし、刑務官からもそういう話はされると思う。だから、面会の時間まで事件の話を持ち出して責めるようなことを言うのは、息が詰まるだろうから私はしない。
夫が話し始めたら勿論話は聞くけど、私からは事件の話は振らない。
夫は刑務所生活は変わり映えがしないらしく「変わり映えのない毎日に変化(面会)があると嬉しい」と言ってくれた。
私はそれで十分だと思ってる。
7.笑顔を見る為に面会に行く
受刑者同士、話をすることはあるらしいけどそんなに笑える話を長時間したりはできない。
仲のいい人はいるかどうか聞いてみたが、夫はいないと言っていた。その代わり嫌がらせとかもないと。悪いお友達を作ってほしくないからそれはいいけれども。
私と話しているときには夫は笑顔を見せてくれる。多分、私と話しているときくらいしか刑務所ではそういう場面はないのだろうと思う。特に、夫は独居房だし。
イジメられていないようなのでそれは幸いだが。
だから、私の前で笑ってくれたり、手を振ってくれたり、楽しそうに話をしてくれる姿を見に行く為に面会に行っている。
これは、本当に愛していなければそうは考えられないだろうけど、でも、あなたの前だけで笑顔になってくれると考えれば、面会しに行く価値は十分にあると思う。
笑顔を大事にしてあげてほしい。
受刑者は孤独だから。
8.良いことをしたら褒める
例えば私の夫には、私が資格試験で使って用済みになった資格の本とか送っているのだが、勉強してるかどうかは聞かない。
勉強してるかどうかしつこく聞いたら「勉強しろ」って強要してるように聞こえるだろうから、自分からは軽い感じで「本読んでみてどうだった?」くらいは聞くけど。
それで本人が勉強してたら褒める。「勉強してて偉いじゃん」とか、ほめて伸ばしていく作戦。
私の夫が「地図が欲しい」と言ったので、学校で使ってた地図の教科書が残ってたので送ってみた。
そのときは
「地図どうだった?」と聞いたら
「180カ国以上覚えた」と言っていたので
「凄いじゃん!」と褒めた。というか、普通に凄いと思った(私は日本の都道府県すら怪しいので、全国なんてとてもとても)。
なんか、そんなふうに相手の自己肯定感を高めていくような会話がいいと思う。
批難したり否定するのは簡単だけど、否定よりも肯定を。
9.根気強く待つ
本人が1番刑務所から出たいと思っているだろうし、身内も刑務所から出て来てほしいと思ってるはず(思ってない人もいるだろうけど)。
だから、刑期が長いと結構痺れが切れてくるかもしれないけど、そこはどうにもならないので根気強く待つ。
面会行く。手紙出す。できるのはそれだけ。
刑務所の仮釈放のシステムは詳しく知らないけど、そう簡単には出てこられないと思って覚悟した方がいいよ。
10.自分の事も大事にする
私は夫に尽くすタイプだけど、自分の時間も大事にしてる。
映画観たり、アニメ観たり、ゲームしたり。
私は夫も大事だけど、両親も友達も大事にしている。
男友達と遊ぶ場合は「男友達と遊んできてもいい?」と夫に確認をとってる。本人が嫌がることはしたくないから、駄目と言われたらしない(駄目と言われたことはないけど)。
まぁ、そんなところかな。
何にしても適度な距離感が大事。お互いに求めすぎないこと。
「私はあなたを大切に思ってるよ」ということを伝えて、信じてもらう。
今まで大事にされてこなかった人は、疑心暗鬼になってる。
だから、まずはお互いが信じあえるように努力するのが第一目標かな。
依存しすぎると失敗するから、うまい距離感は掴んでいかないとね。
死刑判決の出た人と結婚した人たちの本を読んだけど、収容者からの要求がどんどん大きくなって失敗して離婚したらしい。
結婚するのはスタートライン。
お互いの同意の上で書面を役所に出せば誰だって結婚できる。
結婚して最期まで上手くやっていくのが成功。
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