第20話
昔の一張羅を身にまとい、腰に刀を差す。冒険家だったあの日を思い出しながら、一歩一歩進む。
「こんなにドキドキしたっけなあ」
「ん?」
呟きに振り向いたのは、前を歩く青年。ピンク色の前髪が揺れる。
「ああ、なんでも……いや、お前さんには話しておこうかねい。実はおじちゃん病気でねい」
「え、大丈夫なのか?誘っておいて何だが、体がつらいなら無理する必要は、」
「いや、だからこそ行きたいのさあ。だが、足でまといにならないようにしなくちゃだから」
ヒラガキが薬を取り出す。
「これ、朝晩二回。必ず飲む。そうすりゃあ旅の途中で腹が痛くなることはねぇ。えっへへ、もしおじちゃんが忘れてたら飲ませてやってくれい。眠ってても無理やり口に入れりゃあ飲むからさ」
「……ああ、分かった」
「ルノルドー!ハンバーガーって美味しいの?」
リイコの声。慌てて駆けて行くルノルド。
「ストワードのはマズい!買うな!」
「え!?マウマウが美味しいから買えって」
「ギャハハ!ギャハハ!」
「……食欲、減退」
「ちょっとマウマウ!あんた、リイコに変なこと吹き込むなよ!」
「えっへへ、賑やかだねい」
下駄の音を鳴らして近づく。自分はずっと一人だと思っていた。あのときからずっと。
冒険が終わったあのときからずっと……。
―しにたくねぇ……しにたくねぇ……俺ぁ……。
自分はもうダメだろう。体が悲鳴を上げている。体温が奪われる、一面の銀世界で叫ぶ。
―俺ぁ永遠が欲しい。それを、俺に……永遠を……
―永遠を……!!!
〜ストワード中央〜
「う〜寒い!」
「体温調節機能がついてる服なのに寒いの?」
「……ま、まあ。実際はあまり寒くないが、こんなに雪が積もっていると寒く感じるというか」
リイコとルノルドが着ている服は体温調節機能がついている。あまり寒さを感じないようにできているのだ。
「おじちゃんはここ最近ストワードを転々としていたからねい。このくらいの寒さには慣れてるが……」
「私も慣れている。冬、森、寒い」
ヒラガキとラトレルは問題なさそうだ。と、ルノルドにしがみつく若者が一人。
「ううううううしゃしゃじゃじゃ」
「……一名だめそうだね」
「だっこしてくらしゃいっス!」
「だっこしてどうにかなるの?」
ルノルドがため息をつく。
「なりゅっス!!」
「ああそう?」
マウノネオをだっこするルノルド。がっしり掴まるマウノネオ。
「このまま寝ます!!!」
「寒いところで寝るのって良くないんじゃなかったっけ?」
リイコの当然の言葉。しかしマウノネオは目を閉じる。
「寝るな!仕方ない。あんたを包む毛布を買おう。ラト」
ルノルドがラトレルに荷物からお金を取り出すように促す。
「ヒラガキと買い物に行って来てくれ」
「了解」
「いいのかい?おじちゃん、お金持って逃げちまうかもしれねぇよ?」
「あんたは金には執着はないだろう。ストワードには詳しいみたいだし、買い物に関しては人間の生活に慣れてないラトレルの方が俺は心配なのさ」
「えっへへ、なるほどねい。んじゃ、行こう。鳥の兄ちゃん」
「了解した」
「あ、あたしも」
「リイコはここに座っていてくれ。ちょっと話したいことがある」
「え?うん……」
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