第17話
「それが、この国を『永遠』に出来る機械なのか?」
「ええ。そうですよ、王子」
「『永遠』か……」
若い王子は言い淀む。彼が欲しいものが、今、目の前にあるというのに。
「あなたが永遠になれば、この国はずっと安泰です。そうでしょう?」
「あ、あぁ……その通りさ」
評判は聞いている。皆、永遠の体を手に入れたらしい。
「なんて光栄なことでしょう」
「えっ」
「王子、あなたが永遠になることはこの国をも永遠にするのです。私はそのお手伝いが出来る。この機械を使って」
王子の目の前に、小さな砂時計が置かれる。機械仕掛けの砂時計。
「さあ、永遠を願ってください」
「永遠を……」
王子が目を閉じる。
(僕は永遠が欲しい!)
(そしてこの国を永遠にするんだ!)
海が見えた。
この国から見る海では無い。どこかの海が。
穏やかな気持ちになったのはほんの一瞬で、王子の背中をドス黒い悪寒が覆った。
「!?」
「『名誉』ですか。これはまた……」
「えっ!?な、何だ!?」
「王子、あなたはこれから『名誉』を望むことが出来ません」
「それが、アロガント……君がさっき話してしていた僕の代償か?」
「はい。あなたの一番……」
「一番、欲しいものを諦めたその先にこそ『永遠』があるのです」
「それで、どうだったか……」
アロガント・レイ・デイヴィス。短く刈った金髪、青の瞳、褐色の肌。机の上には機械仕掛けの砂時計。
「あの王子は300年は持ちましたと、この前おっしゃっていましたわよ」
「ああそうでしたね。300年も『永遠』を手に入れた、幸福な人でした」
「理想の国家が出来たと言っていましたもの。きっと悔いはありませんわ」
秘書の女が紫の長髪を解き、微笑む。
「悔いは……そうですね。悔いは良くないものですから、無い方が良いですよ」
「『永遠』を手に入れられたというのに悔いがある最期を迎えるなど……」
「傲慢が過ぎますからね」
機械の砂時計が、ピタリと止まった。
〜シャフマ 街中〜
「見て見て!これかわいいですよ!」
「なになに?」
ルノルド、リイコ、そしてラトレルはジュースを飲みながら商店街を歩いていた。
「ほんとだ!かわいい!ウサギ?」
「ウサギのぬいぐるみですね!俺欲しいっス!」
「えぇ……無駄なものは買わないでくれ」
「無駄じゃない!ルノルドはウサギのかわいさを全く分かってない!」
「そうですよ!ウサギってかわいいですもんね!あっ、ルノルドサンもかわいいっスよ」
「なにその投げやりな言い方。思っていないなら言わなくていいだろう」
「これがキャンピングカーにあったら、気持ち悪くなったときに抱っこして安心できるかも」
リイコはウサギのぬいぐるみに釘付けだ。ため息をつくルノルド。
「分かった。だが、一番小さなヤツだぜ」
「「やったー!(っス!」」
「はやく選んでくれ……ラトレルが待っている」
「俺は水色がいいと思うっスよ」
「あたしはピンクがかわいいって思う……」
「ちょっ、一つにしてくれよ。それ以上は定員オーバーだ」
砂時計の王子 4 まこちー @makoz0210
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