第7話
〜ツザール村 夜〜
「ねえ、君は……服をいつもそんな風に着るの?」
「そうだがどうした?」
「……別に」
並んで歩くルノルドとリイコ。リイコはルノルドの服の着方が気に入らないらしい。
「普段は下に何も着ないんだが、あんたがくれた服は何故か暑くないからね。この上から作業着を着ても楽だぜ!」
「ふーん……って、普段は下に何も着ないの!?じゃ、じゃあ作業着はその、胸元は締めないまま……肌を見せてるの!?」
「見せているというより、窮屈で仕方ないだけだぜ。胸元って蒸れるだろう?」
「む、蒸れない!」
「え?ランチェスは蒸れるって言ってたが……女もそうじゃないの?」
「な、誰それ……あっそういえば、」
―あっちの大陸では肌を晒してもいいのよね?ウフフ、嬉しいわ。
―どうして?この服なら涼しいでしょ?
―たしかに機能的だけど、なんだか胸元が蒸れる気がしちゃうのよ。出してる方が楽なのよ?
「……も、言ってたかも」
「ん?何か言った?」
「言ってない!ま、まあ、この大陸で悪いことにならないならいいけど」
「悪いことになんてならないぜ。というか、あんたのその格好の方が良くない気がするなァ。仕方ない……上に着る服を買ってやる」
「え?肌が出てないから大丈夫なのに!」
夜のツザール村はとにかく活気がある。酒場もそうだが服屋も賑わっている。
「あらあら!男前なお兄ちゃんだね!彼女用の服かい?」
服屋に入った途端、店員の女性に声を掛けられる。ルノルドは「あ、あぁ……」と弱々しく返事。
「あ……あんた、選んできたら?俺は外で待っているぜ」
「……?別に一緒に見ても……っていうか、あたし、こっちの大陸のファッションとか分からないんだけど」
「じゃ、じゃあ今の店員に聞けばいいだろう。詳しそうだったし……あんたもその服の上からここにある服を着るんだろう?それなら、な、何着てもいいだろう別に……露出が増えるわけじゃないんだからな……これ財布!使っていいからな!」
「それはそうだけど……。じゃあ待っててね」
「あ、あぁ」
「急に早口で捲し立ててきた。なんかキモ……」
(だーっ!!!女物の服屋なんて居られるか!せ、背中丸出しの服があったぜ……!さ、最近の女はやたらスカートが短い気がしていたが流行りだったんだな……あんなにたくさんミニスカートが……な、なんてハレンチ……)
「ルノルド、選んだよ?」
「うおっ!?!?!?」
リイコの声に驚いて飛び上がってしまう。
「きゃっ!な、何?」
「い、いや……。は、早くない?もう少し選んでいてもいいんだぜ」
「ううん、すぐにビビッと来たのが見つかった。試着したらピッタリだったし!大陸の外のあたしの体型に合っててラッキー」
ぶかっとしたブルゾンジャケットだ。背中になんだか分からない動物の絵が描いてある。
「あ、あんた……か、下半身は……」
「あっ、分かる?このミニスカートかわいいよね」
「ミニスカート……履いてるならいいか……」
「こういうのがこの大陸の流行りみたい。似合う?」
「……い、いいんじゃないか?変じゃあないぜ」
「何その言い方!!もう!」
ルノルドは、女性の褒め方が分からない。
(コイツは大陸の外の女だ……。得体が知れない。だが、意識していなかったが、女であることに違いは無い)
「……」
リイコを見下ろす。リイコは小柄な方だ。キョトンとした顔でルノルドを見上げている。
「ジロジロ見て、何なの?」
「脚を出し過ぎだろう」
「はあ!?服着てるでしょ!あたしはあんたと違って顔以外の露出はしないって決めてるんだから!」
「あんたのいた大陸では皆そうなの?」
「……うん。そう決まってる」
リイコのいた大陸では顔以外の露出はいけないことらしい。
(当たり前だが、全然文化が違うんだなァ)
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