第6話

「……つまりあんたは、空飛ぶ機械でこの大陸に向かっていた途中でオアシスに落ちたと」

「そう。それで、上がってみたら一面砂漠で途方に暮れてたの」

「ふうん……」

リイコがここに来た経緯を聞いたが、ルノルドには全く分からない領域の話だった。

「信じられないなァ」

「別に、信じてもらわなくてもいいから!とにかくそういうことなの!事実は事実なんだからね!」

「ぐ……っ。あんた、いちいちつっかかってくるな」

「そっちが興味無さそうなカオしてるからでしょ!」

「実際どうでもいいのさ。あんたのことなんてね!」

「酷い!遭難してたんだよ!?」

「その辺に落ちて来た女を俺が助ける義理なんてないね」

「ううう〜っ!オジサンの癖に、大人気ない!」

「なっ……!?お、オジサンじゃない!お兄さんだろう!」

「30歳なんてオジサンだもん」

「はぁ〜ん?じゃああんたはちんちくりんだぜ!」

「さ、サイテー!」

「どっちがだ……!あっ」

ルノルドが気づく。ツザール村の灯りが多くなっていることに。

「俺、今夜は夜遊びしようと思っていたんだった!ちんちくりんに構っている暇はないぜ!」

「え、あっちに行くの?」

「ああ。俺はこれから東に向かうのさ。気に入らないモノをぶん殴るためにな!」

その前に少し遊ぶけど、とは言わないルノルド。

「気に入らないもの?」

「くくくっ……『壊れない機械』とやらさァ!気に入らないだろう?」

「……!」

「俺がこの世に生を受けてから250年間……いや、とにかく長い時間が経った!その間に技術は進歩したが……『壊れない機械』とやらは絶対につくれない。それが俺の結論だ。それでいい。それがいい。なのに……!」

「……あたしはそう思わない」

「え?」

「ルノルド、機械は……ううん、生命でさえも」


「きっと、『永遠』になるべきなの」


真っ直ぐな瞳。その美しさに、ルノルドは胸を打たれた。


(だが……)

(なんだ?この、違和感は)

(さっきまでのリイコじゃあない。感情がない)

(これがコイツの本心なのか?だとしたら、俺は……)


「やっぱりあんたはちんちくりんだね」


「……へ?」


「あんたは俺たちを知らないらしい。これから、俺が見せてやる」


ルノルドが目を細めて笑う。


「この俺が、『壊れない機械』の『永遠』をぶっ壊して!」


「あんたに証明してみせるさァ!!!」


そう宣言し、リイコの腕を掴む。

「きゃっ!?」

「村まで走るぜェ!」

脚を動かして走る。途端にリイコの息が上がる。

「見ろ!あの光を!電気はいつか消えるが、今はあんなにたくさん光っているだろう?」

向こうに見える明かりがどんどん近くなる。

「村に着いたら、俺と夜遊びだぜ!」

「な、なんで……っ!?」

「夜はいつか明ける」


「だから楽しいのさ」


リイコを軽々と抱き上げ、走る。


「俺はあんたが気に入らない。だから、あんたの考えを変えてみせる!」


「か、変わらないよ。あたしは、」


「くくっ……くくくっ……ギャハハ!!!そうか。その言葉、後悔させてやるぜェ!」


「なんかずっと一緒にいることになってるけど!あたしはストワード中央ってところに行くんだからね!!」


「おっと、俺もそうさ」


「ええっ!?そ、そんな!?」


「少しは楽しい旅になりそうじゃないか!なあ!リイコ!」


「まって!?勝手に一緒に行くことにしないでよ!……あっ」


リイコの腹が鳴る音。


「ギャハハ!体は分かっているじゃないか!そうさ。腹が減るから……飯が美味い!村に着いたら、美味い飯を食おうぜ!」


「嫌だ!あたし、絶対あんたの言うことなんて聞かないから!」

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