砂時計の王子 4
まこちー
序章
〜シャフマ 辺境の村〜
機械には寿命がある。
「どんなに便利な世の中になっても」
物はいつか壊れてしまう。
「使い手が矜恃を持っていても」
ゆっくりと近づいたり、ときには、急に。
「いつかは絶対に終わりが来る」
それは絶対に抗うことは出来ない。
「俺たちが『生きている』ことも、コイツが『動いている』ことも」
「……俺には同じ。同じなのさ。だから、」
だから、
「『故障』……『死』……には決して抗わない。俺たちはずっと、」
「そうやって生きてきただろう」
「……げほっ!かはっ!うっ……煙吸いこんじまった!うえっ!げほっ!」
作業中に真っ黒な煙を吸い込んでしまった。盛大に咳き込む。
「あーあ。またかっこつけとるからやでえ。ほい」
真っ白なタオルを手渡される。
「アリガトウ……。う゛っ!?なんだこれ!変なにおいするぜ!?」
「実験で使ったヤツやからなあ。変なにおいもするやろお」
「あ、あんたなァ……!おい、ヤス!逃げるな!」
修理が途中の機械を床に置いて親戚を追いかける。飛びついて、そのまま寝技をかけ……。
「あーあ……嫌やあ……俺っち、ここでしんじまうんやなあ……冷蔵庫のプリン……食べたかったわあ……」
「本気でしぬときのセリフがそれでいいのか!?余裕ある癖に!」
「いやあ……あーあ、眠いわあ」
「はああ、張り合いがないぜ!全く!」
瞼を閉じて、ヤスから離れる。真っ黒な髪しか似ていない親戚は常にこんな呑気な声で眠気を訴える男だ。
「ルノルドもそろそろ寝た方がええでえ。明日も朝早いんやろお?」
「……あぁ。コイツを直したら眠るさ。先に寝ていてくれ」
「もっちろおんやでえ。キャハッ」
「寝るときだけテンション高いよなァ……」
ヤスが扉を開ける音。遠ざかっていく足音を背中で聞きながら、目の前の機械に向き合う。
「さァて……」
「あんたはまだ生きたいらしいからな」
「俺が少しだけ直してやろう」
「……ふふ、蘇生じゃないぜ?」
「あんたはまだ『生きてる』。あんたの『故障』は錯覚だったのさ。俺にはそれが理解る。だから安心してくれ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます