第20話 修正済みの古本
2017年、X(旧Twitter)にて公開された奇妙な話。
購入した古本がことごとく修正テープで一文字ずつすべて消されていたというもの。
アカウント主はごく一般的な人間で、旧Twitterを読書アカウントとして利用していた。それまでにされたツイートもほとんどが本の感想と日常の些細な出来事であり、突出したものはない。ツイート日時も一日、二日空くことも珍しくない頻度。また、その日に購入した本を写真におさめてツイートすることもあった。これは新品も古本市などで購入した古本も特に区別なく行われていた。
アカウント主がその異変に気がついたのは2017年5月7日。ゴールデンウィーク中に古書店街へと赴き、数日かけて古本屋をはしごしてきたとのツイートとともに、五十冊近い本の写真がツイートされる。並べられた本のタイトルは雑多で、あまり古い時代のものはない。古本としての価値よりもアカウント主の読みたいものが優先されているようなラインナップであり、本人もそれを認めている。
すぐ読むような予定はなかったものの、たまたま手にした一冊の中で奇妙なものがあったことで再び本の中身とともにツイートしている。
それは、文章の特定の文字だけが修正テープで消されているというもの。
どこで買ったのかいまいち確証がなかったのと、曲がりなりにも有名な古書街に出ている店であることから、買い取りの際に見落としたのだろうと推測している。ただそんな店でもこんな本を買い取り、次の客に渡してしまうのだと、当初はむしろ感心していた。
しかしこの本だけではなかった。
古本は時々、前の持ち主の栞やメモ帳など入っていたりすることがある。もしかしたら他にもそういった本があるのではと、アカウント主は買ってきた本をもう一度集めてランダムに開き始める。同じ場所で買ったわけではない本をランダムに選んだにもかかわらず、そのすべてが一文字ずつ修正テープで消されていることに気付くと、次第に気味悪さを感じ始めた。
また、前後の文脈から消されている文字を推測して特定していたが、消されている文字を続けて読むと「お」「ま」「え」「は」「こ」「の」「さ」「き」になったところで一度検証を中止。
フォロワーだけでなく大幅に拡散されつつあったものの、このまま検証の終了を宣言した。それから、少しでも可能性のある本に至っては処分を検討していると告げた。結局最終的にどのような文章になったのかはわかっていない。
アカウントはまだ現在でも稼働しているが、当時のツイートは消されてしまっている。
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