第12話 たかみこどもパーク連続失踪事件

 たかみこどもパークは某県の高見という場所にあった遊園地。


 1962年に開園したたかみこどもパークは、高見市(当時)の西にある山を切り開いて作られた遊園地。地元の開発業者が新たなレジャー施設の中心とすべく作った家族連れのための遊園地である。周辺施設も含め観光用として作られたが、計画当初は小規模ながら地元に親しまれる遊園地という想定であったため、アトラクションは子供向けが多かった。そのため、年数をかけてアトラクションや施設を増やしていく計画が立てられた。

 しかし開業からまもなくして子供たちが定期的に失踪する事件が多発した。遊園地での迷子はよくあることでもあったが、遊園地そのものから完全に消えてしまい、警察は誘拐などの事件も視野に入れて捜査に乗り出した。だがその間も他の子供が消える事件が発生し、次第に大人たちも敬遠するようになった。

 失踪した子供たちが最後に目撃されているのは一貫してこどもパークの北側にある観覧車だった。

 特に子供がひとりで乗り込むなどした場合、失踪あるいは消失する可能性が上昇。


 とある子供の場合、帰宅する前に「最後に乗る」と言ってひとりで観覧車の列に並んだところを親が途中まで目撃している。また、ゴンドラにひとりで乗り込むところまでは従業員や周囲の証言からも整合性がとれている。その跡もゴンドラの中で座って家族に向かって手を振る姿が目撃されているなど、確かにゴンドラの中に居るという証言がとれている。

 しかしゴンドラが頂上に近づくにつれて、家族がいる方とは反対側の窓を立って見つめていたという。その後、ゴンドラが下ってくると姿が見えなくなり、家族はゴンドラの下側に隠れているのかと思っていた。待っていてもゴンドラから出てこないので、はぐれた可能性を考えて遊園地側に迷子として捜索してもらったが、閉園時間になっても見つからなかった。

 観覧車の従業員はひとりで乗った子供が下りたかどうかを覚えておらず、その後警察もまじえて捜査にあたったが、結局見つかることはなかった。


 その他の事件もこの件と同様である。観覧車のゴンドラにひとりで乗り込んだ子供は、頂上になると立って家族とは反対側の窓を見つめているところまでは確認されているが、その後は行方をくらませてしまう。

 なお、この観覧車で家族や列とは反対側の方角を見ると、ちょうど切り拓いた山の頂上付近を見ることができる。山の頂上付近には特にこれといった社のようなものはなく、いったいなにが子供たちを引きつけていたのかはまったくもって不明である。


 この事件が相次いで報道されたことによりパークは閉園。周囲には既に観光用として作られていた施設やホテルがあったが、パークの閉園とともに観光客も激減し、現在も廃墟だけが残っている。


 なお高見市は現在、86年の市町村合併によりなくなっている。

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