終末レポート【怪異・都市伝説蒐集録】
冬野ゆな
第1話 週末レポート
某県のとある大学では、タイトルに「週末」と書かれたレポートが提出されることがある。
提出者として学内に実在している生徒や教職員などの名前が記載されており、提出日は発見された日時の直前の週末の日付になっている。
内容は週末を過ごす様子をレポート形式にしたもので、一日中ゲームをする、授業のレポートを書く、部活やサークル活動などで遠征に出かけるなどの様子が克明に記されている。名前が教職員の場合であっても同様で、家族と行楽地に出かけた、買い出しに出かけた、家で掃除をしていたなど、同様に週末の様子が記されている。しかし、レポートの最後で提出者は必ずなんらかの理由で死亡したことになっている。
あるとき見つかったレポートでは、朝十時に起床したところから、新作のゲームに没頭する様子が記されていた。ほかにも食事内容やトイレの回数に至るまで詳細に書かれていたが、最後には深夜にコンビニに出かけた帰りにひき逃げ事故にあって死亡したことにされている。
当初は悪戯だと思われていたものの、該当の学生に問いただしたところ、「こんなものを提出した記憶はない」の一点張りだった。ところが、最後で死亡したところ以外は学生が実際に週末を過ごした様子に酷似していたため、大学側は悪質なストーカー被害も視野に入れることになった。
ところがこの現象は学部や学科を問わず、決まった期間もなく不定期に提出されていた。
他のレポートもやはり最終的になんらかの理由で死亡したことになっており、またその全員が死亡することを除いて提出された日時の様子に酷似していると答えた。家族構成やたまたまやってきた親戚などの名前まではっきりと書かれていて、該当者はみな困惑するばかりだった。
該当者はレポートの発見当時、生徒や教職などなんらかの理由で大学に在籍していたこと以外に共通点は無く、ほぼランダムだと思われる。大学側もこのレポートをどうするかで対応に苦慮していた。
しかしあるとき、レポートの提出者として書かれた助教授が、三ヶ月後にレポートに書かれた死因とまったく同じ状況で死去。理由は心不全で、まだ三十五歳の若さだった。
それ以来、大学側は表向きにはこれを悪質な悪戯として処理し、全職員にも同様のレポートを発見した場合、破棄をするように通達された。
現在でも「週末」と書かれたレポートが発見された場合は、悪戯として即座にシュレッダーに回して処分するよう全員に義務づけられている。
一方でそれは表向きのことで、回収されたレポートが厳重に保管されているという噂もある。
どちらにせよこの現象は現在に至っても続いているという。
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