第11話 畳に囲まれた部屋

 「畳に囲まれた部屋」は10年ほど前、X(旧Twitter)にて公開されていた話。

 とあるアカウントの持ち主が、自分の祖父母が住んでいた実家についてのツイートをした様子である。


 そのアカウントの持ち主(アカウント名が本名であったため、A氏とする)は十数人ほどしかフォロワーがおらず、日常報告が多い、いわゆる「身内垢」だった。フォロワーもほとんどがリアルの身内だったと言われており、鍵垢ではなかったものの、かなり一般人寄りのアカウントであった。

 そんなA氏が当時呟いたところによると、祖父母が住んでいた実家を取り壊すことになり、その家のなかに奇妙な部屋があったと呟くところからはじまっている。

 興味を持ったフォロワーとのやりとりがあった後、ツリー形式で経緯を話し出す。

 以下は検証サイトに残されていた一部のやりとりを抜粋したもの。(フォロワーはFと表記)


A:じーちゃんの家、結局取り壊すことになったわー。変な部屋あったけどどうすんだろ

F:変な部屋って何w御札だらけとか?

A:いや、全部畳の部屋。下だけじゃなくて壁とか天井までみんな畳が張ってあった

F:なにそれ?

A:なんかそういう部屋があったんだよ。古い家はみんなあると思ってた


 現在では純粋に装飾として壁や天井に畳(い草)を使うものがあるが、それとは違って、床に敷くタイプの畳をそのまま壁や天井に釘を使って張り付けていたという。部屋はなぜか家の中央にあるり、ぐるりと廊下に囲まれているものの、入り口はひとつだけ。灯りも無いため、昼間でも異常に暗かったという。また、部屋の中央に御神酒を置いておき、一週間に一回御神酒を交換していたが。祭壇のようなものもなく、畳の上にじかに御神酒を入れたコップを置いていたとのこと。

 七年ほど前までA氏の祖父が一人で住んでいたものの、倒れて入院し、そのまま死去。

 既に子供たち(A氏の親の代)も地元を離れていたため、家の処遇をどうするかで時間がかかり、A氏の親が代表して継いだものの、やはり帰れずに年月が経ったという流れだった。そのため解体のためにまずはA氏が片付けのためにかり出されることになった。印鑑や金銭など貴重品は持ち出していたという話であり、現地調査という意味合いもあったと思われる。

 その一方で祖父宅は「畳屋でも似たような店でもなく、ごく普通の家」とのことで、なぜ畳の部屋があったのか謎は深まっていた。そのうえ長い間手入れされていないことで倒壊している可能性もあるというが、その際に、家の状況も含めて旧Twitterにて実況を行うと宣言した。

 まだこの時点では身内のフォロワーしか見ておらず、不特定多数への拡散もされていなかった。


 以下は当日のツイート。


A:来た! すげーことになってる(家の前の画像)

A:まさに廃墟……(内部の画像)

A:荷物置こうと思ったのに置けない

A:そんなに崩れてなくて良かった

(中略)

A:いよいよ開けます例の部屋。ってかもう開いてたんだけど(一面畳の部屋)


 このときの画像は少しぶれているが、天井や壁まで畳が打ち付けられた部屋が映っている。懐中電灯で照らされた部屋の中央には染みがあり、コップが倒れたままになっている。しかしその染みはA氏側の方まで続いており、まるで何かが這いずったような跡になっていた。この画像は後のねつ造説も出ているが、このときA氏は「ナメクジかなんか入ったのかな」とコメントしている。


A:これたぶんナメクジか(廊下の画像)


 A氏はその後、その「ナメクジの跡」を追いかけつつ他の写真を撮っていたが、次第に投稿頻度が激減。


A:ここから入ってきてる?


 このツイートを最後に投稿はされなくなった。

 また実況ツイートがされている間、面白がったフォロワーが増えて百人単位になっていたが、期待に反してツイートは無かった。三日後、A氏のもともとのフォロワーが「A氏が行方不明になっている。だれか何か知らないか」という投稿を行い、更にフォロワーが増加した。

 この一連の実況ツイートに関しては、旧Twitterを使ったホラーエンタメ説が出ているが、A氏は何年か既にアカウントを運用していた。また、A氏の身内アカウントが呼びかけを行っており、実際に行方不明になっていると思われる。


 このアカウントは既に消されており、現在では確認できなくなっている。

 当時のA氏のもともとの身内アカウントも既に運用を中止・または消去などしており、現在、どのような状況にあるのかわかっていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る