第18話 出口のない巨大迷路
日本には1980年代に巨大迷路ブームがあり、テーマパークなどで次々に巨大な迷路が作られた。
その巨大迷路ブームに載って作られたうちのひとつが、某県にあった須賀ファミリーランドに存在する巨大迷路。
須賀ファミリーランドは1962年に開業した家族向け遊園地。
この頃のレジャーブームに載って作られ、乗り物系のアトラクションが中心。地元の人々が多く訪れる場所だったが、時代の移り変わりによってバブル景気にわき、清里ブームが訪れ、更に東京ディズニーランドが開園したことで、バブルの中だというのに須賀ファミリーランドは時代に逆行するように業績を落としていく。そんな苦境のなか、ファミリーランドの社長が巨大迷路ブームに目を付け起死回生の一手として作り上げた。
迷路は現在のような立体ではなく平面で、木の板で区切られた迷路を進んでいくもの。ほぼ木の板で区切られた空間を行くので見た目そのものはシンプルだが、途中でトンネル状の場所や、見晴らし台が三つほどあって周囲を見渡すことができた。内部ではスタンプが置いてあり、スタンプをすべて埋めると景品がもらえるものだった。形式としてはこの時代においてはごく一般的なもので、特に他の迷路とこれといった違いはない。
見晴らし台から見ても
しかし迷路がオープンしてしばらくした頃から、「家族が迷路から出てこない」などの通報が相次いだ。当初は中で迷っていると考えられたが、見晴らし台から見ても迷った人間は見つけることができなかった。中で迷い込んだまま出られなくなったのは一人や二人ではなく、注意深く見晴らし台や地図を確認しながら進んでも見つからなかった。
その後、迷路が解体された際に中で餓死した死体がいくつも発見された。
発見された場所は基本的にはバラバラだったが、中には複数の子供たちと支え合うようにした大人の死体や、果ては餓死ではなく殴り殺されたような死体まであった。死体は少なくとも解体前の調査では何もなかった場所に、突如として現れた。
解体業者は驚きを隠せなかった。また、この迷路の壁は木の板で作ってあるとはいえ、足元の部分は這いずっていけばくぐり抜けられるほどの隙間がある。大人でもよっぽどの巨漢でなければなんとか通り抜けられる空間は作ってあった。
なぜ彼らはそうした処置をとらずに迷路の中で死んでいたのか、そして発見されないままなぜ死んだのか不明である。
事件が報道されると、須賀ファミリーランドは閉園を余儀なくされた。
現在ではすべて解体され、その姿を見ることはできない。
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