第13話 指名手配の頭蓋骨
町に貼られている指名手配のポスターが、知らぬうちに頭蓋骨になっているという都市伝説。
頭蓋骨になっている犯人は、死んで見つかるという前兆であり、その内容がことごとく不審死であるという。
もともとは、駅構内に貼られていた指名手配犯のポスターが実際に頭蓋骨になって掲示されていた事件が元になっている。
1993年、都内にある某駅構内にて「指名手配犯の顔が頭蓋骨になっている」という通報が入った。時間帯は早朝で、通勤ラッシュの時間帯よりも早い時間だった。そのため通りがかった人々が不審に思い、警察と駅の両方に通報・あるいは尋ねたのである。
そのポスターで指名手配されていたのは、1989年に都内で起きた強盗・強姦殺人事件の犯人。
事件の内容は、都内のとあるマンションで女性が殺害されるというもの。被害者はマンションに住んでいた当時26歳の女性で、帰宅途中にあとをつけられて部屋の中に侵入される。女性の衣服が乱れていたことから、おそらく犯人は女性を強姦しようとしたものの、抵抗され焦ったことで衝動的に殺したものと思われる。女性は風呂場に引きずられた形跡などがあったものの、遺体の処理にまでは手が回らなかったようだ。また、室内は物色されたあとがあり、現金やキャッシュカードなどが持ち去られていた。
マンションの防犯カメラの映像や、キャッシュカードから現金を引き出そうとした形跡、そしてこの頃から行われたDNA鑑定などから犯人が浮上。犯人は現場近くに住む35歳の会社員の男で、マンションから逃走してすぐに銀行に向かったようだが、男は会社にも家にも戻っておらず、そこからの足取りが途絶えてしまう。
そのため警察は男を全国に指名手配したが、その行方はようとして知れなかった。
だが事件は、件の「頭蓋骨」の通報にて急展開を迎える。
単なる悪戯と思われたポスター張り替え事件だが、この直後に長野の山中で男の死体が見つかった。場所は人里離れた山中で、男は自分名義の車の中で死んでいる状態で発見された。車は車道を外れた林の中に突っ込むようにしてとまっており、おそらく事故で上の車道から落ちたものと思われた。木にぶつかった衝撃で前は大破しており、男は運転席で体を挟まれた状態だった。割れたガラスから入り込んだ枝が片目から脳を貫通しており、ひどい状態であったという。死因はこの枝によるものだったと思われるが、挟まれた状態から動かすことができず、枝が無くても下りられなかった可能性を指摘されている。
この奇妙な一致により、「指名手配のポスターが頭蓋骨になるとその犯人は死ぬ」という噂が一人歩きすることになる。
なおポスターの件だが、悪戯だろうということで警察は見解を出している。
しかし発見した当時の証言を見ると、ポスターはそこにずっとあったかのようで、まるで本当に頭蓋骨が代わりに浮かび上がってきたようだったという。中には、顔が薄れて頭蓋骨と重なっているようだったという証言もある。また、その頭蓋骨の目の部分には片方だけ亀裂のようなものが入っていたらしい。その亀裂のようなものがあった方の目は、まさしく犯人の男が発見された際に枝が突き刺さっていた方だという。
このような一致から、現在のような都市伝説へと移り変わっていったと思われる。
むしろ不思議なのは、こうした強盗・強姦殺人には似たような事件は幾つもある。それなのになぜこの事件だけこうした奇妙な現象が起きたのかである。
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