月の出ない街

　アトロ王国には月が出ない。荒れた土地に食糧不足。魔法インフラは整備されず、魔法の研究すら禁止である。全てが不足するこの街は、月の出ない街と呼ばれていた。
　ジュークは、この国の不思議な掟に不満を感じながらも大好きな探検をして暮らしていた。
　ある日、幼馴染のグリルが1冊の古い本を持ってきた。そこに書いていたのは、禁止されているはずの魔法研究で栄えた国の様子だった。
　この国では、何代も前の王の時代から、国について書き残すこともまた禁止である。そのため、2人はこの本は掟ができる前に書かれたのだと考え、親に黙って調べることにした。
　その中で、街の変人アルフレッドを頼る。彼もまた、自ら見つけた痕跡をもとに、過去のアトロは栄えていたと考えていた。そして、彼と暮らす捨て子の少女エルミナと共に、彼の…続きを読む