ゲームの中の世界に転生した主人公メルフィーナは、貧しい開拓地に赴き、そこで領地経営を始めます。前世の記憶を頼りに様々な施策を打つ彼女の生き様は、タイトルや作品紹介の印象よりもずっと丁寧に描かれていて、想像の十倍くらい骨太のストーリーでした。
話数を重ねる毎に、この作品への印象は想像したものから大きく変わっていくのですが、作品の本質をおおむね理解したのが22話のあたり。メルフィーナと護衛騎士セドリック、侍女マリー、この三人の関係性が確定した頃です。
『あぁ、これはヒューマンドラマなんだ』なと。
メルフィーナの行動の源泉は前世の記憶で、その記憶にあるチートな発想を現実のものとし、開拓地を発展させ、人々の生活を豊かにしていきます。
しかし最も印象に残るのは、その過程における人と人との対話。特に理屈と感情の天秤が傾く様なやりとりには、強く心を惹かれました。
もちろん対話だけでなく、領地経営の進め方や料理に関する描き方も本作のポイントだと思うし、開拓地に赴くきっかけとなった夫アレクシスとの複雑な関係も見所で、今後どのようになるのか目が離せません。
そして、ゲームの中の世界ということで、本来あるべきストーリーへの強制力がどのように働くのか、という点にも注目です。
内政改革モノとして、とても面白い
男性主人公のハーレムモノが多い中で、この作品は今まで敬遠していた読者も読んでいて楽しいだろう
物語の段取りから感じる知性と面白さは否が応でも、この物語の面白さを伝えてくれ、期待感を高める。
だが、一つだけ気になるのは身分制度を蔑ろにするところだ
例えば、社長が「社員は家族」と言いながら社員食堂で無理やり同じ卓について、社員はリラックスできるか?
あるいは、大企業の社長がやたらペコペコと下げる必要のない頭を下げ、媚び諂うさまを見て、それを他者に馬鹿にされていたとして、そんな社長がいる会社を誇りに思ったり安心した企業だと思えるだろうか?
むしろ社員としては尊大で強権的だろうが、給料を出して仕事を適切に評価してくれ以上のことを望むだろうか?
普通は関わってほしくないと思う
下手に人権や親しみやすさを出そうとして、物語ののバランスが損なわれるのはマイナスポイントだろう
だが、それでもこの物語は魅力的なので、ぜひ見て欲しい