開拓村の昼食を、公爵夫人とともに。

結婚式の直後、一方的に婚姻関係を(事実上)なかったことにされた公爵夫人が望んだのは、辺境の寒村の領有権だった。
彼女には令嬢としての知識や記憶に加えて、前世での記憶があり、この世界があるゲームの世界であると知っていた――という、いわゆる「前世記憶型内政チートもの」です。

本来得られるはずのない知識によってばりばりと領地の改革を進めていく主人公の姿はたいへん爽快かつ魅力的に描かれていますが、レビュー筆者は別のところに本作の魅力を見出しました。

主人公に主人公としての事情や都合、望みがあるのと同様、周囲の人間にもそれぞれの事情があり、都合があり、望みがあります。もちろん、それらが主人公のそれと合致することもあればしないこともあり、そこにはときに軋轢や葛藤が生じます。

こういった脇役たちの事情や都合、望みを描き、軋轢や葛藤までも丁寧に描写することで、脇役たちがより魅力的に、生き生きとした姿をもって物語を盛り立てています。

また、前世の記憶から導かれる「人としてあるべき姿」と、この世界の常識が作りだす「人としてのあり方」もときに衝突しますが、主人公がその衝突から逃げるでもなく、ただ前世の価値観を押し付けるでもなく、両者を折り合わせながら望ましい方向へ傾けていこうという努力が、これもまた丁寧に描かれています。

今後、主人公の立場がどのように変化し、そして彼女の領地がどのように発展を遂げるのか、ぜひご覧ください。


なお、すこしお腹を空かせた状態で読むことをお勧めしますが、時間を忘れて読んでしまって空腹が大変なことになりますので、あらかじめお食事はご用意ください(体験談)。
個人的にはトルティーヤがおすすめです。鶏肉とサルサソースを挟んでどうぞ。

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