自動筆記「思考回路の停止ボタン」

 探す、探す、何としてでも探し出す。見つける。見つけたらそいつをカバーしているガラスごと赤い猫の眼をした指輪で叩き割って、嗚呼、この複雑に絡み合って今にも破裂しそうな思考回路なるものの動きを止めなければならない。


 頭の中は熱いのに、頭皮は凍り付いていて、髪の毛は少しずつ、むちむちとした我が指の間から流れ落ちてゆく。


 僕は一体どこで道を間違えたのだろう。そんなことは実際問題有り得ないのに。それとも僕は最初から、つまり一個の生命体として他の万物に認識されたあの瞬間から何か勘違いでもしていたのか?


 スピードが速すぎる。この眼はまるでバグを起こしたスライドショーのように様々な人間、動植物、地球の歴史を無差別に映し出すことしか許されていないかのように、そしてたとえ僕が鏡を見ても、そこにいるのはもうすでに僕ではなくなったもの、人間の形をした容器でしかないのだ。


                             (了)

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