最終話 償いの鐘
安らぐような…。
「ここは、アタシが中学の時独りで訪れた。精神的に参っていたのか、たまたまパソコンで教会を検索して見つけた。見つけてすぐ無我夢中で走って、着いた。昼間、僅かに人がいて皆何かに祈っていた。馬鹿馬鹿しい。苦労は行動しない限り衰退しないのに。助けてくれる神様なんて存在しないのに。でも、呑まれるように両手を握って祈ってしまった。〈幸せになりたい〉〈罰から逃れたい〉と。何時間か経過して祈り終えると楽になった。以来、本当に苦痛で辛酸な時、祈りに行く。」
渚が時折外出していたのは此処か。相当滅入っていたのかな。
「最近は特にキツかった。やっぱり渚として人格交代すると、夕凪の犯した罪とアタシが受け止めて来た罰が伸し掛かる。希死念慮に苛まれて何度も無価値で醜悪だと。そう後悔してきた。けれど、お前。優次と会って変わった。日々全力を注ぐ勇姿に惚れた。かな?」渚は恥ずかしそうに舌打ちする。「ッ!上手く説明出来ないが、お前といると嫌なことも浄化される。夕凪の時、薄らお前との記憶を共有していた。」
澄ました顔になる。
「兎に角、ありがとう。アンタのお陰で救われた。」
彼女は再び恥ずかしそうに顔を赤らめて述べた。「えっ。…あー。……こちらこそ。」突然の感謝に返答が困る。
「フッ。人間、分からないもんだな。たった一人の弱っちい奴で正気にするんだから。」
僕に近寄り背筋を伸ばす。頬に軽いキスをした。
「これで、ようやく夕凪は亡くなる。……ありがとな。」
「…うん。」
「ま、夕凪メンヘラ君にはアタシのキスじゃ嬉しくないか。」
そう言うと渚は悲しげな笑顔で中央の銅像に指を指す。
「あの銅像の裏に小さな鐘がある。一緒に鐘を鳴らしてアタシの罪と罰を浄化しよ。」「わかった。但し、その前に一つ聞かせて。渚は7人地獄に突き落としたけど本当なの?それは紛れもない夕凪の罪だし。」「どういうこと?」
「要は渚は何も背負わなくて良いんじゃない?だって、純粋に夕凪が全部仕組んでやったことじゃん。それに、何となくだけど渚は本当に良い人だと思う。口は悪いけど初対面の僕に警告を言及したし、今日まで僕と会わずに申し訳なさそうに避けてた。あと、道案内も上手だった。優しくて気遣いが出来る人なんて滅多にいない。素敵だね。」
渚は目と口を開けて驚いた。「わ、ワザトか?全く、恥ずかしくねぇのかよ。……フッ。まぁいい。いい加減鐘鳴らそうぜ。」
鐘の元へ歩む。
2人同時に紐を下へ引っ張り新鮮な銅音が鳴り響く。
真横にいる彼女の顔を見ると、頬を緩めて天高く見上げていた。
改めてこの世界に誕生し刻まれた。
罪と罰を償って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます