第7話 圧倒

僕達はホテルをチェックアウトした。

辺りは暗い空に変わっていた。どうしようかと考えていたところ、ふと夕凪は提案する。

「良かったら私の自宅寄ります?明日も日曜日で休みだし、バイトもお互いまだしてないし…。」「そうだね。せっかくだから甘えてもらうかな。」「こちらこそ、嬉しいです。」

そうして彼女の自宅へ訪れることになった。駅の地下鉄で2本進み降りて徒歩5分で到着した。


「あれ、ここって僕の…」

道中薄々勘づいてたが、まさか僕の今住んでるアパートと同じだった。夕凪はその2階に住んでいたのだ。「意外ですね。これも…何かの運命ですね。」恥ずかしそうに俯く彼女は背が低いせいかとても可愛げがあった。2階へ階段を登り廊下の右手前に彼女の家があった。扉を開けて彼女の部屋にお邪魔する。

「お邪魔しまーす。」

部屋の中は意外にも綺麗に整えられていた。ごくシンプルな部屋であり、てっきり女性特有のピンクの絨毯や人形等とイメージしていたが全く別物のようだ。テレビ、テーブル、緑の絨毯、壁にはカレンダーのみ、冷蔵庫にマグネット等はなく、カーテンも薄青色。一つ目に入ったのは彼女の勉強机の横に5段分ある本棚が2つあったのだ。そこには書店と同じく本が規律良く並べている。

「えっ。こんなに小説読んでいたんだ。僕のように30冊程度なのかと…。」

大体180冊以上はある。

「うん?だって昔から没頭していたんですもの。私カフェで言ってましたよ。」「あ、うん。」ここまで没頭していたのはそういない。普通は成長してくにつれて人生の物事が増加し余裕がなくなり読む機会が減る。

僕は高校1年に小説にハマり、3年初めから受験勉強と部活と並行し、部活引退後はバイトもしてしばらく読書は休暇していた。無事進学が決まって入学手続きや住み場所の選択を済ませた後再び読書を始めた。今から約1ヶ月前である。

彼女の場合、部活やバイトをしなかったとはいえ、これはいくら何でも凄い。夕凪の証明に圧倒され少し萎縮した。隣で仰天した僕を見て夕凪は一瞬微笑んでいた、かも。「ところで時間的に夜中だから寝ましょう。」「あ、うん。結構疲れたし。」彼女のベットで抱き合いながら寝る。先に夕凪が寝て小動物のように小さく呼吸する。

そんな時僕は目を開けたまま天井を眺め、再び高校の過去を振り返る。


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