第14話 案内

「ああ、そうだ。アタシと夕凪の罪と罰を償いにな。」

然り、すぐ様僕は外着に着替え準備する。渚は中に入り無言のまま玄関の前で立ちすくむ。「準備できたよ。行こう。」

彼女と再び対面した時、ニヤッと笑った。「フッ。MA-1か。夕凪が大好きな上着だな。」

「えっ。本当だったんだ。てっきり過去に語った夕凪の私語は全て嘘だと…。」

「巧みな嘘は真実を混ぜる。あいつはアタシ以上にずる賢い。騙された男達をさぞ滑稽だと甘んじていただろうな。」渚は腕を組む。嬉しいような悲しいような複雑な気分に浸る。やべっ。泣きそう。いや、泣いた。

「ほら、メソメソしてっとまた詐欺るぞ。いーから、行くぞ!」渚は気まずそうに言いながら僕の腕を掴み強引に外へ連れ出す。


夜、電灯に照らされつつ閑静な住宅街を渚の後に続き歩く。駅に向かってるようだ。

「…ところで教会へ行くの?」彼女は手をポケットに差し込み前を見たまま答える。「さあな。着いてからのお楽しみだ、餓鬼。」口は変わらず悪いが、意外と気遣えるんだな。本当に人を殺めたのか?

駅に着き、停車中のタクシーに手を挙げる。運転手は気付き、降りて後ろのドアを開ける。「すいません運転手さん。お待たせしました。」敬語出来るんだ。「いえいえ、問題ない。」陽気な運転手はチラッと僕を見る。「真夜中のデートかな?こんな遅い時間に出歩くのはオススメしないが、若人の青春は誰にも止められない。さ、乗って乗って。」乗車すると既に目的地が明瞭なのか即座に発進した。

車の流れる振動音だけを聞きながら横窓の外を静観する。渚も同様に。30分経過し、景色は移り、竹林が茂ってきた。山に突入したのだ。途端に振動が止む。「さ、着きましたよ。後は車では不可能です。近いので歩いて下さい。代金の方お願いします。」えーと、六千さんびゃ、「はい、これで。」早っ。しかもピッタリ。「どうもー。お気をつけて。」

タクシーを降り、暗い獣道が先に続く。ここを通るのか。

ん?奥に光?

渚は躊躇いもせずに歩き出した。「あっ。待って。」50メートル歩くと光に包み込まれていく。

多くのライトアップを施された小さな教会だった。戸惑って立ち見する。渚は首を後ろに向けて言う。「入るぞ。ん?なーに、誰もいないよ。集団で殺人鬼が待ち構えてるはずないし。」「あっ、うん。」

木製の背丈と変わらない扉を押して入室する。中は海外ドラマによく観る教会そのものだ。赤い絨毯、立てられた蝋燭、横長椅子。意外と明るいし温かい。安らぐような…。

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