第3話 一目惚れと好機
僕と夕凪は早速意気投合した。
あの後連絡を取り合い後日プライベートでお互い会うことになった。夕凪も某田舎から都会のここへ来たが不安に苛まれて家に籠っていたらしい。互いに集合場所を決めて彼女が行きたかったカフェで色々話し合いたいそうだ。
時間になり僕は駅の出入口に待っていると彼女は少し急ぎめに小走りで現れた。あれ?服の系統似てる?
「ごめんなさい。遅くなって。」
「ううん。まだ時間になってないしお互い早かったね。それより、いい格好だね。僕もMA-1好きなんだ。」ちょっと言うには突然すぎたか?しかし彼女は嬉しそうに顔を赤らめて答える。「そうなんだ。ありがとう。まさか同じ服の系統だなんて驚いた。それに男っぽい服の方が何か好きなんだよね。女性なのに似合わないよね。」「そんなことない!服なんて自分が好きだと思う物を着れば良いよ。それに僕はそんな夕凪が素敵だよ。」マズイ。なんだか告白でもしてるみたいだ。まだ会って二度目なのに。でも、なんだろう。夕凪とは本心でいれるような。彼女はさらに頬を紅潮させて恥ずかしそうに少し俯く。「あ、あ、ありがと、う。嬉しい、よ。とにかくカフェ行きましょう!」「うん。そうしよう。」
互いに何も話さず30秒歩いて。
「着いた。」えっ?はや!近っ!「ちかっ!」「うん?そうだけど?」「あ、うん。そうだね。」
待ち合わせして集合したのはー!?
もしかして夕凪って天然?いや、変人?何だっけ、まあいいや。これはこれで歩く負担は減るし駅に近いからある意味気楽かも。
駅近とは思えない位にレトロなカフェだ。昔ながらの玩具や絵画と今時珍しい装飾が置かれており雰囲気も別世界だ。あまり日々駅近の割には人気が無い場所に建設されており店内も広い分客は1人か2人と数える程。
端のテーブル席に座り70手前の高齢な男性からメニューを聞かされ流れるようにホットコーヒーとチョコパフェを一緒に頼んだ。
「それで。今日は僕と話したいって言ったけど一体何を?」
夕凪は多少真剣な顔になり口を開く。
「津軽さん。私、その、失礼ながら恋愛をしたことがないんです。良ければ一緒に恋愛したいです。付き合ってみたいです。」
え、えーーー。いきなり告白つー!?
「ちょ。え?ん?それって告白?」うんと彼女は頷く。嘘だろ?
「ちょっと待って。そういうことはもう少し仲を深めてからでは?まだ今日でお互い会うのが二度目で知らないことだらけなのに。早計過ぎじゃない?」
動揺してかつい強めに質問していた。
「確かに早計かもしれない。でも私は本気です。これまで恋愛は愚か友達すらできませんでした。高校までただ1人と寂しい思いを過ごしてきました。無口で繊細で相手に合わせることに必死で全く話すことができない。そもそも他者の存在が恐ろしいような。いつからか恐れるようになり私は小説に没頭しました。当然文学部に入りたかったけど社会に出てちょっとでも生き残りたいと考え経営学部に入りました。同時に深い恋愛も経験したいと願いました。そんな中貴方と偶然にも先日会いました。普段一目惚れとは縁遠いのですが席に着く直前に貴方を見て惚れてしまい隣の席でとても緊張しちゃいました。今日会って確信したのです。貴方となら恋愛が出来ると。いや、体験が出来ると。」
「は、はぁ。一目惚れねぇ。気持ちは嬉しいし僕も恋愛経験は無いから出来るならしたい。けど、あまりに突然でびっくりしたよ。まだ、会って間もないのに本当にいいの?幾ら恋愛がしたいと豪語しても勢いだけではど…。」
いや、彼女の目は本気だ。
話を聞いた限り余程周囲に不満があって我慢してきたのだろう。それに、何かしら裏があって急接近してきたならこんな堂々と真正面に言えるはずがない。頬を赤らめ恥ずかしさ故か汗が凄く涙も出そうな状態だ。身体も震わせている。これは、もう、止められない。
「わかった。付き合おう。僕も夕凪と気が合いそうなのは何となく感じていたし。」
パフェとコーヒーが沈黙になった時にタイミング良く置かれ、話を続ける。
「ありがとうございます。嬉しいです。」そうして少々気まずそうにパフェを食べコーヒーをゆっくり飲む。
「その、優次さん。良ければ今日の夜どうですか?」ん?「せ、せ、せっく、す。」
ぶっ!
思わず口のコーヒーを吐き出しそうになり勢いよく飲み込む。変に入って蒸せる。
「あ、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。これまたいきなりだね。失礼だけどここまできたら夕凪は恋愛経験豊富の痴女なの?」
「そんな訳断じてありません!ならば夜証明してみましょう!」えーー。「はぁ、良いよ。僕も未経験だけど。」
やはり夕凪は変わり者だ。常識が通じない天然で自身の言葉の重みをまるでわかっていない。危なっかしいが彼女の熱意には応えてみるか。
僕も一人前の男として。
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