剪芽梨刑事シリーズ②・・・銘酒・六角

138億年から来た人間

事件1

「剪芽梨さん、あそこ。」


剪芽梨せめなしたかし、31歳。

大阪府警主任刑事。

大学を卒業し、大阪府警察官採用試験にトップ合格。

東大法学部もいる中、見事キャリアの道を勝ち取った。

学業優秀、柔道では大学日本一にも輝いている。

正義感が強く、意志を決して曲げない。

しかし、それらすべてが裏目に出た。

組織の人間という警察の本分をはき違えることが多く、昇進試験の推薦枠を与えられていない。

結果、今の主任の地位に甘んじている。

管理側にとっては煙たい人間なのだ。


彼は今、一人の男の行動を監視していた。

事件は、3日前に起こった。



「今朝、赤城のマンションで、殺人事件が発生しました。被害者は、夢野ゆめのいけみさん、21歳。条琢じょうたく工科大学3年生です。死因は、外傷性ショック死。出血多量でした。警察からは、まだ事件の内容に関して何の情報提供もありません。」


テレビのニュースは、この事件をトップに据えた。





「えぇ、そんなぁ。約束したじゃない。連れて行ってくれるって。いいの?私を置いて奥さんとで。いいのよ、あのことバラしちゃおうかなぁ…」


「・・・。」


「何にも云えないわよね、あなたには。いいわ。その代わり、私に新しいマンション買ってちょうだい。都心の一等地のよぉ。お安いでしょ。何せあなたは、お・か・ね・も・ち。」


夢野いけみは、大学生活を謳歌していた。

何人もの男を手玉に取り、金をむしり取っていた。

彼女は普通の会社員の父親には、まじめな学生を装っていた。

大阪の副都心に高層マンションの最上階を借りている。

全ての資金は、パパ活だ。


「くそつ、あのあま、ぶっ殺してやる。」


スマホをズボンの後ろポケットに入れた男は、いけみの電話に人目も憚らず大声で怒鳴りたくなった。

男は、いけみに弱みを握られていた・・・。


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