現場百回
「剪芽梨さん、真浦の犯行だとすると、妙に思えるんですが…」
剪芽梨班きっての若手有望刑事、
子供の小銭入れを盗むのに、その子供をわざわざ殺してまで奪うのか?力づくで奪うこと等ガタイのいい真浦にはいとも簡単な事なのに。
また、足が付くというのに、その後凝りもせず賽銭泥棒を何故したのか?
剪芽梨は、分かっているといった表情で神社の境内に佇んだ。
周辺をくまなく確認していく。
現場百回、捜査の基本を二人は繰り返し行っている。
刑事の基本に立ち返ることが迷った時の方程式だ。
見落とした部分に事件の手がかりがある、そう彼らは信じている。
そして、二人共が「奴は犯人じゃない。」と刑事魂が脳に語り掛けるのを聞いた。
「刑事さん、なぜうちの子は殺されなければならなかったんですか…」
剪芽梨班、與那虞は、眼鏡を時々戻しながら、殺された子供の両親に話を聞いていた。
「そこなんですが、もしかしてお子さんは小銭入れにあった小銭以外にお金を持ってはいませんでしたか?」
両親は首を振った。
「あの子はお金に無頓着で、何時も何も持たずに遠くに遊びに行くんです。一度、歩いて遠くまで遊びに行ったっきり、何時になっても帰ってこなくて・・・。私達が車で探しに行くと、京都まで歩こうとしてたみたいで、途中疲れて道路で蹲まってるあの子を見つけて。それ以来、バス代程度のお金は必ずリュックに小銭入れに入れて忍ばせるようにしてたんです。住所の分かる名札も入れて…」
與那虞は、両親の話から犯人は狙って子供を殺したのではないと判断できた。
「運が悪かった」
それだけでは片付けられない事の重さに心を苛まれながら、両親の元を後にした。
真浦に国選弁護人が付いた。
名前は、
大阪府警は慌てた。
条廼壱は警察に辛酸を過去に何度も味わわせている。
殆どが行き過ぎた取り調べに対する証言無効で無罪という結果だった。
「国選なのに、何故あんな売れっ子弁護士が付いたんだ。」警察内部は訝しがった。
剪芽梨班は、佐茂韋大社に集結していた。ある証拠が見つかったのだ。
「鑑識班を呼べ!」
剪芽梨は言葉鋭く部下に指示した。
「剪芽梨さん、これを真浦のものと断定できれば確たる証拠なりますね。」
佐倉蛇の興奮気味の言葉に剪定芽梨も頷く。
「うむ。間違いなく起訴できる。」
その場にいる刑事すべてが確信した。
大社の裏手の林の中にあったその証拠品は男児に関する猥褻本だった。
この本にある指紋が真浦と一致すれば、猥褻目的で真浦が殺された男児を襲った可能性が出てくる。
殺害動機がはっきりするわけだ。
20分程で佐茂韋大社は再び警察に寄っての物々しい姿に変貌した。
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