61%
「知らないわけないでしょう、真浦さん。」
取調室に連れていかれた俺は、事実無根の罪を認めさせようとしている警察に腹が立った。
「真浦ジョージ、死体遺棄の罪で10時02分逮捕する。」
「な、何言ってんだ。なんだよ、死体って…」
剪芽梨班は、真浦を逮捕した。
殺害された子供の小銭入れから指紋が取れ、周辺にも真浦の靴底と同じ
スタートラインに立った剪芽梨だったが、逮捕時の真浦の表情が妙に印象に残った。
「何だ、この違和感は…。」
剪芽梨の脳内に得体のしれない疑問が渦巻き始めた・・・。
「知らねぇから知らねぇって言ってんだぁー!」
真浦は、取調室で同じ質問に何度も答えさせられていた。
「貴方は、何で、子供の財布を持ってたのかって聞いてんだ。」
上西も、負けずに気勢を張った。
「ドォーーーーーン・・・」
真浦が、取調室のテーブルを思いっきり蹴飛ばした。
「知らねぇって言ってんだろうがぁー!…」
真浦は開き直りを見せた。
「ピンポーーン!」
夢見いけみは、待ち人が来たとばかりに、マンションの入り口まで勇んで出たが、ドアの前で逡巡する。
「あいつがもし何かしてきたら・・・」
いけみは、恐る恐る、入り口のドアのキーボタンを押す。
「ジーッ、カチッ。」
ゼンマイ仕立てのおもちゃのようなロックが自動で外れる音。
レバーをゆっくり下に押し、ドアを開ける。
男は、隠れるようにいけみの部屋になだれ込んだ。
「何慌ててんの!まだ入って良いとは・・・」
いけみが言葉を言い終わらないうちに男は、飛び込むように彼女に身体を預けた。
「うっ…」
いけみは、うめき声と共にその場にうつ伏せに倒れた。
倒れる瞬間から意識がないせいで額を床に強く打ち付け「ゴツン!」という大きな音が男の肝を潰した。
「早めに片付けねぇとバレちまう…」
サバイバルナイフがその輝きを赤く染めた。
「真浦ジョージ、さん。いつから賽銭泥棒やってるの?」
上西は、此れ見よがしに嫌味を込めて尋問する。
このクソ男、後で吠え面かかせてやるからなぁーっ!
覚えてろぉー!
「うるせぇー、黙秘だぁ!黙秘権を使う!」
真浦は、その言葉のあと、だんまりを決め込み、取調べは難航した。
夢見いけみは、父、公一の実子ではない。
母親、アカコの連れ子だった。
いけみは幼い頃に、公一から性的虐待を受けた。
小学6年の夏休みだった。
「いけみ、こっちで一緒にスイカ食べないか?」とアパートの窓に向かって公一が、呟くのが耳に入ってしまった。
その時、公一はリストラに遭ったショックからうつ病を発症していた。
ただ、譫言のように呟いた言葉だった・・・
黙秘を続ける真浦に、警察は手の打ちようがなかった。
迫る勾留期限。
そんな時、殺された子供の首から繊維片が見つかった。
鑑識は、直ぐ様、真浦の衣服を家宅捜索し、同じ繊維と思われる黒いTシャツを見つける。
照合の結果、61%の同一確認が取れたが、ありふれている既製品で確証を持つまでには至っていない。
「上西、必ず落とせ!証拠はある。」
大阪府警察署長、
真浦の取り調べは、午前10時から始まった。
一時間ごとに休憩を挟む予定で始まった取り調べだったが・・・。
「真浦、お前がやったんだろう?」
上西 守取調官の口には最早、丁寧語は消えていた。
「やってねぇっつってんだろうがぁ!それより一時間たってんだろうが、休憩だ!タバコよこせや!」
真浦は、約束した時間の経過を示したが・・・
「ふざけるんじゃねぇぞ、真浦ジョージ!お前は犯罪を犯した疑いをもたれてる身だと自覚してるのか。人殺しがぁ…」
上西の言葉は真浦の心を抉り取った。
真浦は、横暴な刑事の態度に弁護士が来るまで何も発言しないと口を貝にした。
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