デジャヴ
捜査本部のある大阪府警に戻ったのは、検視官の遺体解剖結果が上がった頃だった。
「主任、おかえりなさい。」
小森が剪芽梨を待っていたかのように近付いた。
「京都は暑かったですか?行きたかったなぁ・・・昔の彼女が京都にいるし・・・」
「小森、主任と俺は、京都巡りしてきた訳じゃないぞ。」
「失礼しました。與那虞先輩!」
戯けるように敬礼姿勢をする小森を見て、剪芽梨もほくそ笑む。
「出来てるか?」
「はい。こんな感じです。」
本部モニター画面に映し出された被害者および関係者の見取り図を三人が注目した。
「被害者、大月みやこと他の被害者の関係が希薄そうだが、やはり、匿名電話だろう。」
「與那虞さん、この被害者全てが、関係としては無いに近いんじゃ・・・」
考え込む二人に剪芽梨が囁くように付け加える。
「共通しているのは犯人のみ。」
剪芽梨は、納得した二人をよそにパソコンデータから作られた見取り図に見入った。
最初の被害者、夢野いけみから二番目の被害者の小学生、皆兵エナジー社長、大月みやこまで一本の線でつなぎ、その間に六角、双龍を絡めトリカブトを加えてみた。
「この線から何か分かることはないか?」
與那虞、小森もその先を見立てる。
「わかることといえば、三鬼縞と大月、この二人の被害者は殺しにトリカブトが使われましたが、最初の夢野と小学生殺害はナイフと絞殺。怨恨があるとすれば、あとの二人で前の二人は成り行きもしくは行きずり。」
「それとも別の犯人ってとこだな。」
與那虞の見立てに対して剪芽梨はそう答えた。
「もう一つあります。あとの二人の殺しは、順序立てられて用意周到に反抗が行われていますが、最初の二人に関しては、ほとんど同時刻にしかも、犯行場所は、極々近い。それも繋がっているとも言えるのではないでしょうか?」
小森が自分の見立てを二人の先輩刑事に対して遠慮がちに言うと
「どちらかを殺そうとして、その途中でなにか犯行動機が生じた。」
與那虞が続けると、剪芽梨がこう呟いた。
「何故、夢野いけみは殺されなければならなかったのか?それが、この4件の殺人を解く鍵になりそうだな。」
そういった剪芽梨は、心の中に渦巻いているもう一つの不安に辿り着いていた。
「被害者は、4人だけではないのかもしれない・・・」と。
「お父さん、今日は遅くなるの?」
「すまん、今夜は、部長と一緒に取引先との折衝をする予定なんだ。ほんとにすまん。プレゼントは明日までには間に合わせるから。」
左近は、妻に気付かれずにスナック店店員、牧野しおりとの浮気を繰り返している。
付き合い始めて、もう2年を過ぎていた。
仕事の失敗で、フラフラと飲み歩いている時、ふと目に止まった〈デジャヴ)というスナックに入った。
店のママは、もう還暦を迎えていて、左近は店替えをしようとカウンターを立ち上がりかけた時、店の奥から一人の若い女性が現れた。
見た目は、10代とも思えるほど、若く純粋な顔をしていた。
薄化粧で水商売っ気のない女だった。
左近は、、その店に毎日のように通い、彼女の出勤時間を聞き出すと、その時間までは、他のガールズバーで時間を潰した。
左近は、現在29歳。
妻のさゆりは年上女房で、35歳。
彼の中で、何かが変わろうとしていた。
たまには、年下と・・・。
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