12話 異世界で、スピード無双!
私はベルクを背負って走っていた。
「死ぬほど屈辱だ、いっそ殺せっ!」
「おぶられてることか?」
「分かっている癖にっ!」
ポカポカと頭を叩く。
「全然痛くないぞ、ははは!」
何を隠そう、私が被っているのはベルクのパンツだ。昨日のうちに説明したせいで綺麗に洗われたのが残念だが、それでも満足だ。ははは!
「しかし、本当に凄いな、2代目のパンツと、そのパンツの組み合わせは。遠かったのに一瞬でたどり着きそうだ」
ベルクは今ノーパンだ、ノーパンの女性を背負うとは、私はもう死んでもいいかもしれない!
「もう少し左に傾けろ」
「分かった!」
ベルクは振り落とされないようしっかりとしがみつきながら地図を見て私に指示する。
そう、しっかりと、ね。ふふふ、背中に押し付けられる胸の柔らかさが五臓六腑にしみわたるっ!
「お前、また変なこと考えてるなっ! 覚えてろよ!」
ぽかぽか。
「効かないぞ! はっはっは!」
そうしているうちにあっという間に目的地についた。
目的地は森だ。この中にいるんだな?
「よし、引き続きベルはしがみついててくれ、この速さであっという間に占領だ!」
「俺のいる意味はあるのか?」
そう聞かれたので、エリーザのパンツを手渡す。
「それを履け」
「お、おう」
そう言うとパンツを履き始める。もちろん、私は紳士なので目線をそらす。
「ベルには敵陣地の真ん中で戦ってもらう。といっても、私が一瞬で周りの敵を抑えるから、いわゆる囮というやつだ」
「なるほど、敵が多いとしても対処しやすい、よく考えたな」
「まぁ、頭の出来は祖父譲りだ」
振り返るとベルクは既に履き替え終わっていた、ベルクは私を見てサムズアップをして言った。
「なぜ両親を飛ばしたのかは分からないがな、とりあえずその作戦で行くぞ」
了承を得ると、再びベルクを背負い森の中へ入っていく。
少しひらけた場所にたどり着く。一度ベルクを下ろすと森に反響する声が聞こえてきた。
「よく来たな! ヴェール本部へ! ダブルホルダー!」
「ダ、ダブルホルダー?」
「我々カラーはチヒロ、お前を要注意人物とみなした! よって!」
と、いきなり地面が盛り上がり、私たちを囲むように大木が現れた。
「処刑する!」
すると次の瞬間大木が私たちめがけて勢いよく伸びてきた。
潰されるっ! そう直感した私はベルクを抱き寄せ、大きく跳んだ。
「流石だな! だが、これだけではないぞ!」
すると細いながらも長い木が次々と伸びてくる。その先には弓矢を構えた手下が何十、何百もいる!
「放てー!」
次々と私たちをめがけて矢が迫ってくる。
「ベルク!」
「言われんでもぉっ!」
ベルクが火の壁を作る。矢は一瞬にして燃え尽き、次々と落ちていく。
火の壁に守られながら地面に着地するとベルクを一度地面に置く。
「さぁ、パンティータイムの始まりだっ!」
私は音速レベルのスピードで移動する。彼らには私の姿も見えていないようだ。
「いっ、いつの間に地上に・・・・・・って! パ、パンツがない!」
「俺のパンツはーっ!?」
「私のも、くそっ! やられた!」
次々と手下を、地上に下ろし、パンツと弓矢を奪いを繰り返す。
先ほどとは違い、ベルクも背負っていないので100%のスピードで、木の上へ跳び上がり、手下を抱えて地面に跳ぶ。
そんな作業を繰り返し、時間にして1分程度だろう。全員下ろすことに成功した。
だが、さっきからめちゃくちゃに生えては枯れてを繰り返す大木。これを操るグリニアは一体どこに?
「ベルク! グリニアが見つからない!」
さっきまで攻撃を防いでいたベルクの元へ行く、もう手下は全員戦闘不能になり、役目は終わった。
「これだけ木が多いと分からねぇな」
「木を隠すなら森の中とはよく言ったものだが、本当に全く分からないなっ!」
足元から再び木が伸びるのを反射的に避ける。いつどこから来るか分からない攻撃は実に厄介だ。
「いっそ、この森を燃やしつくしてみるか?」
手から火の玉を浮かべてニヤリとするベルク。
「待て! この森はかなり広い上にさっき一周した時は村みたいなものもあった! グリニアがいる可能性のある範囲が広すぎる、甚大な被害が出るぞ!」
「じゃあどうすりゃいいんだよ!?」
少し考えているとベルクが手下の1人の胸ぐらを掴み、荒々しく問い詰める。
「知らないのか!? グリニアの隠れてる場所は!?」
「例え死んでも答えるものか!」
「拷問してでも・・・・・・」
「やめろ!」
うぐぐ、どうすれば良い?
落ち着いて、よく考えろ、敵の居場所・・・・・・。
弓矢・・・・・・。
弓矢の、飛んでくる方向?
そうか! 単純な話だ!
「よし、ベル! 私は攻撃を逃げることのみに専念する。ベルは敵の攻撃の範囲を見てくれ!」
「攻撃の範囲?」
と、ベルクを落とさないよう少しスピードを緩めて木と木の間を跳び移る。
「さっきの弓矢と同じだ。弓矢に射られた時は刺さった位置から敵の居場所を見つけ出すだろう? この能力だって同じ、射程範囲があるはずだ! 敵の攻撃を利用して敵の居場所を見つけるんだ!」
「なるほどな、単純な考えだが、スケールの大きい戦いをしていると完全に忘れてしまう」
「そういうことだ!」
実践はチェスや将棋のように俯瞰視点ではない。だからこそ単純なルールに気付けないのだ。
色んな所を跳び回る。敵には私達がただ逃げているようにしか見えていないだろう。
「分かったぞ敵の居場所! 私の指示通りに移動しろっ!」
「あぁ!」
「そこを右に跳べ! そして、まっすぐ行って・・・・・・」
指示通りに跳んでいく。
「この辺りだ! さて、あとはどうする!?」
「よし、火を放てぇーい!」
「お前っ! さっき駄目だって言ってたろ!」
「場所が絞り込めたなら別だ! 私の力を持ってすればすぐに消火出来る!」
そう言ってパンツから水玉のパンツを取り出してひらひらと掲げて見せる。
「分かった」
そう言うとあたりに次々と火を放つ。
私はグリニアの操る木を注意してみる。自分の危機に反応してなにかしらの動きを見せるはずだ。
すると、さっきまで私たちを狙っていたの木が一本の木に向かっていく。
「そこかぁーっ!」
その木の伸びる先、きっとこの中にいるに違いない。私は木を思いっきり殴る。
バッキィィィィッッッ!!
折れた木の中にお目当てのグリニアがいた。
すぐさま捕獲し、パンツを拝借する。
「グリニアの緑レースパンツ! ゲットォーッ!!」
「嘘だっ! このグリニアが負けるなんてっ!!」
私たちは忘れずに木々を消火し、皆を連れて森を出た。
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