第4話 異世界ルールを覚えよう!

「聞きたいことは山ほどある、しかし、まずは私の身の上話をしよう」


「言ってみろ」


 なんでこうも上から目線なんだ、ベルクは。


「私は、この世界とは違う、異世界からやってきたのだ。私が住んでいた国は、名を日本という」


「ニホン、確かに聞いたことない国だな。だがよ、証拠がねぇ」


「証拠は特にない。だが、これを前提にしなくては話がすすまない、とりあえず信じてくれ」


 ベルクだけでなくノンも信じられないというような顔をしている。だが、それも仕方ない。私が日本にいた時に『俺は異世界から来たんだ!』と言いはる人がいれば、電波なヤツだな、としか思わない。

 まあ、可愛いおにゃのこに猫耳や犬耳狐耳なんかがあれば話は別だ、信じるかわりに触らせてもらう。

 あぁ、いつかはケモミミを触ってみたい、耳は敏感な部分という謎の先入観もあるので、尚更反応が楽しみだ!


 いけない、脳内でまたもや思考が乱れた。


「とにかく、私は異世界から来たからこの世界の常識が分からない。その中でもパンツの存在についてが全く分からない、説明してくれ」


 やれやれというような反応を見せたあと、ベルクは語り始めた。


「全く、こんなことガキでも知ってることなんだがな。パンツは、履くもの、ここは分かってるだろ?」


「当然だ」


「パンツはかぶるものではない、これも分かるな?」


「当然だ」


「なら、お前が被ってるそれはなんだ」


「水玉パンツだ」


 結局購入した帽子も外したので、パンツを被ったままの変態不審者だ。周りの反応はそこまで痛くないので、なんだか落ち着くこと格好で過ごしている。


「そう、本来はパンツの能力は履いてなくちゃあ使えない、お前のパンツは何色だ?」


「そんな、いきなりっ//」


「答えろ」


 ・・・・・・。


「白です」


 どうやらおふざけは通用しないらしい。こちらは教えてもらっている立場だから当然だ。


「白は基本的に能力増強の効果、さっきみたいに水は操れないはずなんだ。それに、水玉パンツを装備したところで、あれほどまでに能力を応用することは出来ないし、あんな威力は出せない」


 なるほど、やはりパンツによって能力が違うのか。


「まさかだが、パンツが持つ能力くらい分かるよな?」


「いえ、そこは元いた世界と違うので」


「一体どうなってんだおめぇの世界はよぉ」


 こっちのセリフだっ!!


「とにかく女性が装備出来るもので言えば、能力増強、火属性、雷属性、水属性、木属性で、聖属性、穢属性だなんかがある」


「それぞれ何が出来るんだ? それに、あい属性って? 愛? LOVE?」


「能力増強は言わずもがな、力が強くなる、私が装備しているパンツだ。そして、火属性は火を操り、水属性は水を操り、木属性は自然、そのなかでも植物を操る。雷属性は電気を操り、聖属性は見えない神の力を操り、穢属性はモンスターを操る」


 なるほど、どれも均等に強そうだ。聖属性に関しては、話を聞くだけでは未知数だな。そして、あい属性というのは能力は闇とか魔みたいなイメージの能力だ、おそらく穢属性と書くのだろう。


「なるほど、大体のことは分かった。次に、そのルージュとやらについて教えてもらおう」


「ルージュというのは、炎舞のエリーザ率いる集団のことだ。主に汚れ仕事で荒稼ぎをしている連中で、そういった奴らのせいで今この街の治安は悪くなっている」


「ふっ、そのエリーザは私が倒した」


「いや、ヤツは生きてる」


「なんだって!?」


 あの時、確実に倒したはず・・・・・・。パンツも落としたし。


「ヤツの火属性のパンツはとても強力だ、そう、陽炎を作ることだって容易い」


 陽炎、そうか! 直撃させたと思ったのは屈折したエリーザの姿だったんだ。逃げられたのは残念だが、私が命を奪っていないということが分かって安心した。


「ふふ、だがエリーザのパンツは私の手にある!」


「確かに、ヤツは戦いの術を失った、そして今ルージュは強いリーダーを失った影響で混乱に陥っている。そこを突いて奴らの金を奪おうとした、そしてその金を本来あるべき場所に戻そうと、な」


「いきなり目的を話すつもりになったのはなぜだ?」


「お前はルージュじゃなさそうだからな」


 なるほど、くっ殺含め、あの言動は私が悪の組織の一員だと勘違いしていたからだったのか。

 それに、ベルクは悪いやつではなさそうだ。予想よりも誠実で真面目な性格もあり、仲間にしたのは大正解だったみたいだ。


「ルージュは、私のお父さんとお母さんがいたところです」


 突然ノンが口を開いた。


 つまり、エリーザは仲間も平気で殺す人間だということだ。意図的な攻撃ではないにしろ、流れ弾が仲間に当たることを考えていなかったということになるからな。


「なっ、貴様!」


 再び逆鱗に触れたのか、ベルクはノンを睨んだ。


「待ってくれベル。その両親はエリーザの流れ弾で死んだ、それにこの子は被害者だ。虐待を受け、最後はノンを置いて死んだ」


「ふんっ、やはりルージュにはまともな奴がいないな、クソが」


「話を戻すが、つまりはあの店は悪いことをしてあの金貨を手に入れていた、ということなのか?」


「あぁ、そうだ。だが今更行っても遅い、既に店はないさ」


 今思えば、あの時無理やり渡された10枚の金貨は口止め料ということだったのだろう。

 話したいことも聞きたいこともなくなり、しばしの沈黙が流れた。


 目線の行き先が無くなったので、ベルクの胸を観察することにした。

 かなり野性味溢れる格好、要するに露出が多い服を着用しているが、それに収まっている胸も、今にも溢れんばかりの肉付きだ。

 うむ、かなりエロティックだ。


 ノンはまだまだ子供なのもあり、私本来の性的嗜好とはかけ離れている。

 だが、変態とは誰にでも分け隔てなく接する、また一種の紳士なのだ。

 ふむふむ、やはり小ぶりである。ワンピースを着ているため、サイズはハッキリと分かるが、まさに絶壁。だがこれからの成長に期待できる、子供は無限の可能性を秘めているのだ!


「さて、お前は私たちを仲間にして、これから何をするつもりなんだよ?」


「そんなの決まっている、ルージュの殲滅、いや、世界を平和にするための変態ジェネレーション実現に向け・・・・・・」


「変態ジェネレーションとやらが一体なんなのかは分かんねぇが、それにはまず何をすべきなんだ」


「まだこの世界に来たばかりでどんな問題があるかが分からない」


「そうだな、問題は山積みだぞ。人を襲うモンスターに、ルージュのような組織は属性の数だけあるからな」


 なるほど、ルージュは火属性の組織。なら、残る親玉は6つあるというわけだ。


「ならば、直近の目標は悪の組織殲滅に向けた準備だ! 秘密基地を作る!」


 ヒーローなら、まずは秘密基地が必要だ。それに、帰れる場所があるのはとても良いことだ。


「場所は? 資金は? 予算は?」


「それも決まってはいない、すべてひっくるめた秘密基地の制作作戦、ただいまより決行だ!」


 こうして、我らHENTAIヒーローズの活動がスタートしたのであった。

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