15話 異世界に温泉、再び!

「で、どうだったのだ? あれは成功なのか?」


 グリニア途中で合流し、引き連れて基地に戻ってきた。


「いや、まだまだだな。少し聞き込みもしてみたが、周りの人間は来るのを嫌がったとのことだ」


「そ、そうか・・・・・・」


 私たち2人の会話を聞いて、周りも少し重い空気に包まれる。


「だが、確実な一歩だ。村見学はこれからも定期的に行うようにセッティングしたから、少しずつ、少しずつではあるが関係は良くなっていくだろう」


「グリニアの、せいか・・・・・・」


「まぁ、そのとおりだな」


 私はベルクの言葉を否定しなかった。それが厳しい言葉だとしても、それは紛れもない事実だったからだ。


「グリニアにはこれからもジ・H、ケモノ担当として活動を行ってもらう、共に頑張ろう、な?」


 誰一人異議を唱えるものはいなかった。


 しばらく間を置き、この地下基地の廊下の突き当たりを覗き見た。


 その先には暗闇が広がっている。そう、ゲラモに増築工事のために穴を掘ってもらっているのだ。

 また土が溜まっていたので、能力増強のパンツを2枚使って急いで地上の遠くに運び出す。


「なぜ、ナチュラルに私のパンツが使われているんだっ」


「仕方ないです、諦めるしかないです」


「悔しいっ! クソがっ!」


「下品ですよ・・・・・・」


 というわけで、この作業を繰り返していた。ちなみに、この能力増強の力を以てしても、穴を掘ることは容易ではない、その点、彼女はプロフェッショナルだった。


「カルダモン〜、シナモン〜、クローブ〜、一欠片の生姜〜、最後に茶葉〜」


 また土が貯まるまでと、チャイを淹れていた所、ゲラモが突然こっちに向かって走ってきた。と、思ったらはしごから上に向かって逃げるように基地から出ていった。


「なんでしょう、トイレでしょうか?」


「いや、トイレなら地下にあるぞ?」


 すると、いきなり地響きが・・・・・・。


「な、何事だ!?」


 次の瞬間、廊下の奥から水が迫ってきた。


「うわぁーっ!! 溺れちゃうよぉーっ!」


 コットンから次々にはしごを登っていく。しかし、私は1人、グリニアのパンツ片手に佇んでいた。


「何してるんだ! ヒロ!」


「任せてくれ、グリニアのパンツ装着ッ!」


 そして、イメージする。あの時と同じような巨木を。


 そして、廊下の奥から迫ってくる水を、地下から伸びた巨木がせき止めた。


「お、おぉ! よくやったなチヒロ!」


「流石お兄様ですっ!」


「ふふ、褒めるでない」


 元カラーのリーダー2人から、お褒めの言葉を預かったところで、みんなを地下に呼び戻し、街を走っていたゲラモを捕まえて基地に戻った。


「逃げたことは申し訳ないっす! でも逃げないとまずかったっんすよーっ!」


「危うく死ぬところだった」


「ほんっとうに申し訳ないっすー!」


 そう言って土下座してペコペコするゲラモ。


「なんだか、あったかくないか?」


 そういったのはグリニアだった。確かに、言われてみると・・・・・・。


「それに、少しジメジメします・・・・・・」


 うむ? この2つから導き出される結論は・・・・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・。


「温泉の完成だーっ!」


 そう、さっき迫ってきたのはお湯だった。思い返せば、近くに温泉があるのでその源泉にぶつかったと考えるべきだろう。


 ゲラモは着ぐるみの上半分を外し、完成した温泉を眺めていた。


「感謝するぞ、ゲラモ。おかげでこんな素晴らしい温泉が出来たのだ!」


「わぁ〜、ポカポカしてて気持ちよさそーっすー!」


 無視かい。


 巨木を操り、水の流れを押し戻し、ゲラモと協力して穴を上手く活用し、温泉となるようにルートを構築した。そして、穴を掘り進む時に出てきた岩なんかも活用して、上手〜いこと温泉が完成したのだ!


「そういえば、ゲラモは獣人なんだよな?」


 ゲラモの見た目は人間と変わらないが、手がモグラのように大きく、長くて太い爪が生えている。


「その通りっすよ、違うところといえば、腕の他にも尻尾があるっす。見たいっすか〜?」


 そう言って着ぐるみに包まれたお尻を振ってみせる。


「み、見たい・・・・・・」


「ベルクさーん! またチヒロさんがえろえろ〜な事言ってるっすー!」


「計ったな! ゲラモーッ!!」


 それから、すぐさま駆けつけてきたベルクにボコボコにされたのは言うまでもない。


「ほ、ほれじゃ、はっそく、みんはで入っへくれはまへ・・・・・・」


 ベルグにやられて腫れた頬をさすりながら、温泉の完成を伝える。


「すごいです! 私、温泉が大好きなので、とっても嬉しいですー!」


「そういえばお前、なんであの時温泉にいたんだ?」


「それは単純に、あの温泉に行ってみたかったからです。私、温泉巡りが趣味なんで、南の方で活動してた私があそこにいたのはそれが理由です」


 というわけで、女子全員は温泉へと向かった。コットンは他の人と入ることを嫌がりながらも、結局連れて行かれていた。


・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・。


「すごいですね、まさかこんなところに温泉が出来るなんて、いつでも入り放題なんですか?」


「そうだな、入り放題だな」


「わぁ〜、これ以上ない幸せですよー!」


 盛り上がりを見せる5人、そして対象的に嫌がる1人。


「ボ、ボクは1人で入るからいいよ・・・・・・」


「1人で入ったってつまらないと思うぞー? 恥ずかしがる必要ないぞー」


 少し茶化すグリニア。


「グリニアが入ると、お湯に毛が浮くんじゃありませんか?」


「え・・・・・・、ど、どうしようか・・・・・・」


「そんな数本くらいどうでもいいだろ、仲間はずれにしてやるな」


「ベルクぅー、お前いいやつだな!」


「ふんっ、寄るな」


「コットン、大丈夫ですよ、別に恥ずかしくなんて・・・・・・」


 みんながコットンを説得している中で、ゲラモだけはいそいそと服を脱いでいた。そして、下着を下ろした瞬間のこと。


「あわ、あわわわ・・・・・・」


 コットンから鼻血が垂れていた。


「だ、大丈夫ですか?」


 声をかけるが反応しない。


「も、もしかして、コットンって、男だったり・・・・・・します・・・・・・?」


 以前のチヒロとの会話を思い出して、そう呟いたキエイル。


「えっ!? こんなに可愛いのに、男の子なわけないじゃないですか!」


 信じられないという様子のノンと、手を顎に当てて考えるベルク。


「だとして、どうやって男の子と判別するんですか?」


「方法は、1つしかないな」


 ベルクは、その手を・・・・・・。


・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・。


「うわぁぁーーーっっっ!!」


「うわーんっ! だから言ったんですーーっ!!」


 なにやら温泉の方が騒がしいな。


 さっき淹れたチャイを飲みながら、そんなことをぼんやりと考えていると、ベルクがコットンを摘んで走ってきた。


「こ、こここ、コイツ、男だ!」


「なるほど、やはりな・・・・・・。私が男と女を見間違えるはずがないと・・・・・・」


「とりあえず、コイツは預けたぞ・・・・・・」


 コットンをこちらに渡すと再び温泉の方へと戻っていった。


「自分は男だって言えば良かったのではないか? 嫌がるばかりじゃ伝わらないだろう?」


「男って、バレたくなかったんです」


「なるほど、その気持ちはよく分かる。女湯に入りたいと思うのは男なら誰だってそうだろう」


「いえ、そうではなく・・・・・・」


 なにやら言い淀むコットン。


 女子軍団が温泉を出たあと、私たち2人で温泉に入った。男仲間が出来て嬉しいなぁなんて思っていると、コットンが鼻血を出して倒れてしまった。急いで外に連れ出し、涼ませたらすぐ回復したのだが・・・・・・。この話は、また今度しよう。

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