とんでもないことをしでかし(本人無自覚)、『光の聖女』と名乗らざる得なかったモルゲンは人間と魔族の共生の旅を終え、知識を活かして雑貨屋を営んでいた。
彼女の専門は『微生物学』の『真菌』。菌だからと忌避してはならない。紅茶に、納豆、ヨーグルト、果てはイワシの缶詰まで。時に薬となり、毒となり、切っても切れない存在だ。
人間と魔族――切っても切れない関係はどう共生していくのか。彼女は自身に世界に問うていく。
読み進めるとぐっさぐっさと刺してくるんですね。心をえぐられますよ、本当に。
しかし、それが正しいのです。一人の頭で作られた常識なんて、めためたにされてしまえばいいのです。
何を言っているかわからないでしょう。頭が凝り固まってる証拠です。こちらの物語を読みましょう、自分を省みることは必要なことですから。
かつての仲間達が苦悩しながらもたくましく生きる姿や、王都を取り巻く問題、それから人間と魔族の確執。さまざまな要素を絡めてきてとても楽しく読んでおります。
完結したら、またもう一度書き直したいな、と思いつつ、応援です。
「ヒトは愛するために遠くへ行くの」まで読了時点でのレビューになります。
舞台は人間と魔族の戦いが終戦した後の世界。勇者パーティの一人である元聖女モルゲンの生活を軸に、両種族の折り合いを見つめていく。
このお話の柱になっているのが、微生物。
結びつき、繁殖し、変質するその性質は一見異世界ファンタジーと無関係のように思えますが、人間と魔族が共に生きるようになった多様性の社会の写し鏡でもあります。読んでいてハッとする場面が多々あり、裏付けされた知識は強い説得力となって物語を後押ししています。かと言って小難しいお話ばかりではなく、個性的なキャラクターたちの魅力に引き込まれているうちに、きっと次々ページを捲っていることでしょう。私の最推しはモルゲンの弟子のユリアです。多くの読者を魅了する師弟愛と健気さと気高さがとてもGood……!
楽しく知識を深め物語に没入できる完成度抜群の一作。ぜひおすすめです!
この物語の始まりは、人間と魔族の対立が終わったところから。
勇者、僧侶、魔法使い、そして――聖女。四人の勇者パーティーの活躍により、平穏に戻った世界は、多様性に溢れた世になった。
人間と魔族が共存すると言っても、蟠りは容易には消えやしない。人と人のちょっとした差でも争うのに、容易には蟠りは消えないだろう。
祈りを捧げるだけが聖女ではないし、聖女とて人である。しかも、光の聖女を名乗ってはいたが、本当は微生物学者。彼女が、如何にして勇者達と共に平和を取り戻したのか。
人と人の違いとは何なのか、平和とは何なのかを、この物語は教えてくれる。
また、主人公の得意分野である微生物や細菌。パンに始まり、納豆があり、人は微生物や細菌と共にある。そんな様々な知識もストーリーの中で語られるので、科学的な面からも楽しめるので、是非とも手に取っていただきたい。オススメです。
多く方がレビューをされているように、ファンタジーながら、設定は現実社会にも通じる生物学のエッセンスが散りばめられているオリジナリティー溢れる小説です。
一方で、魔族と人間とか異種族間の差別や偏見など、ファンタジー要素を含みながらも、我々読者にも問題提起を投げかけるような作品となっております。
と言いながらも、堅苦しすぎず重すぎず、街の雑貨屋を拠点に話が進んでいき、キャラクターの軽妙なやり取りもあり、奥が深いにも関わらず読者がどこか安心できるような配慮が印象的です。
そして、とにかく主人公のモルゲンさんの微生物や発酵の知識量がすごいです。
生活の中の一コマを科学的に説明していくので普通に勉強になります。
レビュー時点では完結しておりませんが、楽しく読み進めていきたいと思います!
人間と魔族の対立に終止符が打たれ、大きな争いが影を潜めた世界。
そんな世界では、もはや聖女がいるは必要なくなってしまったようです。
主人公のモルゲンは今、『光の聖女』という肩書を返上し、『雑貨店リヒト』という店を営んでいます。
本作は、現実世界の知識を随所に取り入れたファンタジー小説。
微生物の知識だけでなく、差別や性加害の問題も取り入れられた意欲的な作品です。
読むうち、世の中には色々な問題があるんだなって再認識させられました。ライトなファンタジー作品ではありますが、実は奥深いテーマを持つ物語です。
個人的に一番の見どころだと思うのは、やはり主人公の微生物に関する知識ですね!
今まで知らなかったの微生物の知識に毎回、唸りっぱなしです☆
わたしが特に好きなのは『第17話 ヒトが恋をする理由』♪
勇者・アルトゥール、魔法使い・エレイン、先生こと聖職者・パルシヴァル、そして主人公である光の聖女・モルゲン。
この勇者パーティによって、黒死病ペストを発端とした人間と魔族の争いに終止符が打たれました。
しかし、後世の魔族への偏見は続き、ポルダー共和国では人間と魔族の接触禁止令が出されたほどです。
同時に、人間魔族問わず、外見への差別がより一層強まりました。
特に黒い髪や瞳、肌を持つものは、身内を殺した憎しみの対象から、いつの間にか『黒死病を蔓延させるもの』という意味へと変わっています。
いつか勇者・アルトゥールは言いました。
『差別のある社会の方が、管理しやすいんじゃないかと思う時がある』。
同時にモルゲンは、言いました。
『「管理しやすい」って感情は、恐怖から来るんじゃないかな』。
『私は、例えどんな恐怖に駆られても、乗り越えられると信じたい』。
本作は、他者との相互理解という点に重点が置かれているようです。
しかし、皆が皆、モルゲンの言うように強くはあれない。それは、呪いを抱えた勇者・アルトゥールにすら通じます。
誰もが手を繋いで分かり合える世界は理想であっても、実現は困難です。
それでも、それを信じて行動する行為に意味はあります。
モルゲンはそれを思想し、実行します。
そして、相互理解で外せないのは恋愛でしょう。
モルゲンとアルトゥール、相互の想いは、様々な感情やしがらみ、呪いによって雁字搦めにされています。
果たして、モルゲンとアルトゥールは恐怖を乗り越えられるのか?
今後のストーリーに注目していきたいところです。
ヒロインのモルゲンちゃんの博識っぷりに脱帽しつつ、良質のファンタジーの世界に浸れます。
優しい雰囲気と長閑さも感じるなか、物語が進むごとに世界の他種族間にある偏見や問題などが浮き彫りになってきたりと、なかなかにシビアさも兼ね備えています。
これは今起きている現実世界の私達に、鋭く問いかける物語でもあるかと思えました。
『菌』を扱ったファンタジーの小説を初めて読んで、驚きとともに、胸に深い感銘を受けています。
物語を読み進めて、またもう一度冒頭数話を読み返したのですが、これがまた印象も重さもすべて変わってくるのです。
このレビュー段階では完結していませんが、きっと最初から最後まで何度も読んでしまうのだろうと思います。
今までに取り上げられることのなかった題材をテーマに、生きてる者にその価値観を掘り下げ問いかけられ、ぐっときます。
子供から大人まで楽しみながらも、世界をよりよくしたいときっと願いたくなるような物語です。
発酵というテーマで様々な食品等が登場しますが、読み手に配慮された分かりやすくイメージがしやすいモノから取り上げているため、どういうモノなんだろう?と思考にノイズが発生することなくすらすらと読み進めることができます!
街や店の描かれ方がファンタジーの世界へ誘い込んでくるような素敵な描写であり、舞台となる街等の設定がとても綿密に考えられているように感じられました!
基本的に発酵食品は癖があるぶん、好みがはっきり分かれるためとても魅力的なテーマとも思います!
そして、素敵なテーマに加えてキャラ同士の掛け合いにも魅力が溢れています!
主題の発酵とは別に重めの話題も絡まるのですが、掛け合いのテンポがアクセントとなり、必要以上の悲壮感を煽ることがなく話の本質に向き合える進行も上記の魅力を高める要因ではないかと・・・!
個人的に馬用の桶というものをこのように使う作品は初めてみました・・・だからこそみなさんにも読んでいただきたい・・・と!
そんな発酵元聖女様の物語。みなさんもご覧になってみてはいかがでしょうか?
微生物や発酵の勉強になるだけでなく、現代社会でも抱えている問題が登場して考えさせられます。
差別。偏見。性的軽視。対立。病気。
ストーリーとしてもおもしろいのですが、重すぎない微妙な匙加減で、作者は問題を投げかけます。
ひとつ取り上げるなら、たとえば差別。
それについて主人公の体験や意見が書かれていますが、私たち自身も問いかけてみる必要がありそうです。
どうして差別が生まれるのか。どうして差別したがるのか。なぜ差別はなくならないのか。自分の内に、差別する心はないと言い切れるのか。
作中では魔物とヒト。能力。肌の色で差別を受けるシーンが書かれています。
無知であることの恐ろしさを感じます。単純に知識があればいいということではなく、相手を知ることなく思い込みや間違った価値観のもとに差別している単純さ。
この作品のテーマでもある共生とは、まず、相手を知ることから始まるのではないかと思います。
微生物もそうですよね。その微生物の特性や働きを知らなければ活かせません。
私たちも、目に見える部分だけで相手を判断していたのでは、共生の道には進めないでしょう。
共生が「互いに利益を作り循環させる」のなら、自身と相手の特性を知り協力し合わなければならない。差別し排除するようでは、循環型の利益は生み出せない。
そんなことを読んでいて思ったのですが、これは私の意見であって、作者のロンズさんの考えとは違うかもしれません。
でも、こうやって一人一人が自分の頭で考えてみることが必要だと思います。
微生物。パン作り。個性的なキャラ。魔物とヒトが争った過去。敏感でいながら恋には鈍感なヒロイン。
物語としてもおもしろく、読み応えのある作品です。
主人公モルゲンは元光の聖女であり、微生物の研究者。
菌のことをよく知らないので「そうなんだー」と学びながら読み進めています。
しかしすごいですね、作者様も菌に詳しいのでしょうか。本当に勉強になります。
勇者との恋もあるのですが、まぁ無自覚。
絶対両思いじゃん! はよくっつけ! と思いつつ、モルゲンがあまりわかっていなさそうなのが、菌と合わせてこの物語の醍醐味です。
菌、と書けば一歩引いてしまいがちですが、わたし達の生活には欠かせませんよね。
これはそれが異世界という舞台でしっかりと描かれているお話です。
菌のこと知りつつ、じれじれな恋愛を楽しみませんか。
ぜひ、読んでみてください。
無学で申し訳ないです。
「ファーメンテーションって何?」っていうのが正直なところでした。
なぁーに、調べてみればなんてことはありません。『発酵』でした、『発酵』。めっちゃ身近でした。発酵食品大好きです。
もうね、この年になると横文字に弱くなるから。『アジェンダ』とか『エビデンス』とかにもいちいち突っかかって「あ?日本語でしゃべれや!」ってなっちゃうから。そんなことはどうでも良いんですけど。
さてこのお話、タイトルにもあります通り、『ファーメンテーション(発酵)』がキーワードというか、主人公(ヒロイン)であるモルゲンは微生物学者なんですね。そんなモルゲンですが、なんと、『元・聖女』という肩書を持つのです。
微生物学者なのに聖女の才能があったの?すげぇ!と思いましたが、実はそうではなく、彼女の微生物学者としての知識がまぁなんやかんやして『奇跡』と呼ばれ、聖女になった、っていう。
これはね、私が昔々にパン作りを見た時にも思ったやつでしたね。
だって、なんかあれこれしたら、パン生地が勝手に膨らむんですよ。幼稚園の先生が「いまから先生が魔法を使ってパンを膨らませるからね」とか言って、布をかぶせて放置したら本当に膨らんでるんですもん。いやマジで魔法だと思いましたからね。
これに限らず、人間って、自分がその仕組みを知らないことって「これは魔法だよ」の一言で騙されちゃうんですよ。騙されちゃうってなんか悪い言い方ですけど。
なので実は昔から、例えばこれまで『奇跡』なんて言葉で伝わって来た宗教的なアレコレなんかも、その当時の人には理解出来なかっただけで実はただの『仕組み』だったりするんじゃないかなって疑っていました。でも、『奇跡』にしといたほうがロマンがあるし、そういうことを言ったら「そういうところがあるから松清は可愛くないんだ」って言われちゃうので黙ってましたけど。もう可愛い年でもないのでここで言っちゃえと思って。
私の話は良いです。
こちらの作者様、いつも思うんですけど、もうほんと博識でですね。大層な勉強家なんだろうなって。それで、その知識をひけらかすんじゃなくて、こうやってお話の中に盛り込めるのがすごいんですよ。ちゃんと物語として生きてるんですよ。ほんとね、こうありたいって思いますよ。
発酵のことだけではなく、胸が痛くなったりするような差別、対立の歴史なんかもあって、シリアスかな?と思いつつも案外クスッと笑っちゃうようなシーンもある、とても読み応えのあるファンタジーです!