恐怖を乗り越える物語

勇者・アルトゥール、魔法使い・エレイン、先生こと聖職者・パルシヴァル、そして主人公である光の聖女・モルゲン。
この勇者パーティによって、黒死病ペストを発端とした人間と魔族の争いに終止符が打たれました。

しかし、後世の魔族への偏見は続き、ポルダー共和国では人間と魔族の接触禁止令が出されたほどです。
同時に、人間魔族問わず、外見への差別がより一層強まりました。
特に黒い髪や瞳、肌を持つものは、身内を殺した憎しみの対象から、いつの間にか『黒死病を蔓延させるもの』という意味へと変わっています。

いつか勇者・アルトゥールは言いました。
『差別のある社会の方が、管理しやすいんじゃないかと思う時がある』。
同時にモルゲンは、言いました。
『「管理しやすい」って感情は、恐怖から来るんじゃないかな』。
『私は、例えどんな恐怖に駆られても、乗り越えられると信じたい』。

本作は、他者との相互理解という点に重点が置かれているようです。
しかし、皆が皆、モルゲンの言うように強くはあれない。それは、呪いを抱えた勇者・アルトゥールにすら通じます。

誰もが手を繋いで分かり合える世界は理想であっても、実現は困難です。
それでも、それを信じて行動する行為に意味はあります。
モルゲンはそれを思想し、実行します。

そして、相互理解で外せないのは恋愛でしょう。
モルゲンとアルトゥール、相互の想いは、様々な感情やしがらみ、呪いによって雁字搦めにされています。
果たして、モルゲンとアルトゥールは恐怖を乗り越えられるのか?

今後のストーリーに注目していきたいところです。

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