異なるものが互いに利益を作り循環させる、それが共生

微生物や発酵の勉強になるだけでなく、現代社会でも抱えている問題が登場して考えさせられます。
差別。偏見。性的軽視。対立。病気。
ストーリーとしてもおもしろいのですが、重すぎない微妙な匙加減で、作者は問題を投げかけます。
ひとつ取り上げるなら、たとえば差別。
それについて主人公の体験や意見が書かれていますが、私たち自身も問いかけてみる必要がありそうです。
どうして差別が生まれるのか。どうして差別したがるのか。なぜ差別はなくならないのか。自分の内に、差別する心はないと言い切れるのか。
作中では魔物とヒト。能力。肌の色で差別を受けるシーンが書かれています。
無知であることの恐ろしさを感じます。単純に知識があればいいということではなく、相手を知ることなく思い込みや間違った価値観のもとに差別している単純さ。
この作品のテーマでもある共生とは、まず、相手を知ることから始まるのではないかと思います。
微生物もそうですよね。その微生物の特性や働きを知らなければ活かせません。
私たちも、目に見える部分だけで相手を判断していたのでは、共生の道には進めないでしょう。
共生が「互いに利益を作り循環させる」のなら、自身と相手の特性を知り協力し合わなければならない。差別し排除するようでは、循環型の利益は生み出せない。
そんなことを読んでいて思ったのですが、これは私の意見であって、作者のロンズさんの考えとは違うかもしれません。
でも、こうやって一人一人が自分の頭で考えてみることが必要だと思います。

微生物。パン作り。個性的なキャラ。魔物とヒトが争った過去。敏感でいながら恋には鈍感なヒロイン。
物語としてもおもしろく、読み応えのある作品です。

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