双子の兄弟

「さっむ……。早く冬、終わらないかな」

「まだまだ終わらないよ、二月だし」


 通学途中、後方からふとそんな声が聞こえた。振り向くと俺のクラスメイトで双子の兄弟である、銀治と銀河がいた。


「おぉ、銀河と銀治じゃないか。おはよう!」

「こんなに寒いのに雪斗は元気だね。僕はもう寒すぎて挨拶もままならないよ」


 俺は二人に元気よく挨拶をしたつもりだが、兄の銀治に冷たく返されてしまった。


「……兄さん。雪斗が元気に挨拶してくれてるのに、ちゃんと挨拶を返してあげないと可哀想だよ」


 銀治の後ろから、弟の銀河が顔を出して、兄の銀治を咎める。


「いや、別にいいけどな。慣れてるし」


 俺はそう銀河をフォローする。


「じゃあ兄さんの代わりに、僕が挨拶をしてあげるよ。おはよう、雪斗」

「あ、あぁ……。おはよう」


 銀治が挨拶をしてくれない代わりに、銀河が挨拶をしてくれた。なんか張り合いないな。


「あ、もうすぐ始業の時間になる。早く行こう、銀河。じゃ、雪斗また後でね」

「ちょっと待って、急に走らないでよ兄さん!」


 銀治はふとスマホを見て青ざめ、学校へと走っていった。それを見た銀河も、

慌てて銀治の後ろを追いかけていった。


「まったくあいつらめ、俺を置いてけぼりにしやがって……」


 俺はふぅとため息をついた。銀治も銀河も、悪い奴じゃないんだけどな。兄の銀治は少し人との接し方が不器用なだけで、銀河も無口ではあるけど優しい奴だ。

でも、置いてけぼりにするのはどうかと思う。せめて俺にも声をかけてくれればいいものを。


 俺は少しモヤモヤした気分を抱えつつ、早足で学校に向かった。


「よっ、おはよう雪斗! ギリギリだなー」


 教室に着くと、真白が挨拶をしてくれた。


「おぉ、おはよう。ギリギリに登校するなんて、我ながら、ちょっと情けなくは

ある」


 俺はそうため息をついた。



    *



「そういえば、あの双子の兄弟。ちょっとミステリアスで遠巻きにされてる感じあるよな」


 休み時間、真白が俺にそう話しかけてきた。


「遠巻きにされてるっていうより、自分たちから絡みに行かないから、二人ぼっちなんじゃねぇの?」


 俺はそう反論した。


「なに、急にあいつらのことになると饒舌になるな。あいつらになんかされたの?」


 真白が心配そうに聞いてくる。でも別に、銀治の挨拶がなかったってだけなんだけどな……。


「いやべつに、大したことじゃないって。あの兄弟に挨拶したら、銀治が挨拶返してくれなかったってだけだよ」


 俺はそうことも無げに答える。


「銀治が挨拶を返してくれなかったって……。それは感じ悪いな」


 真白が呆れたように言う。


「まぁ、あいつってちょっとツンケンしてる奴だし。それに、銀河は挨拶してくれたからいいけどさ」


 俺はそう真白に言う。

しかし真白は少し顔を曇らせている。

こいつがこんな顔するなんて珍しいな……いつも明るく笑っているイメージなのに。


「悪い、ちょっと俺アイツに一言言ってくるわ」


 そう言って、真白は銀治の机に向かっていってしまった。






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