みんなでマシュマロを焼こう!
「ほら、持ってきたぞ。マシュマロ」
真白がマシュマロがいっぱい詰まったパックを俺たちの目の前に差し出した。
「そうこなくちゃね!」
銀河がそうテンション高めに言った。
「じゃあ、一旦マシュマロを焼くためのバーベキューセットを借りないとね。
あと、竹串も人数分必要かな。ちょっと係の人に言って、借りてくるね」
銀治がそう言って、バーベキューセット置き場に歩いて行った。
「あっ、僕も行くよ」
氷尾さんも、銀治について行った。氷尾さんが、上手く交渉してくれるはずだ。
「じゃあ僕たちは、ここで準備しておくよ」
銀河は二人にそう言って、俺たちに向き直った。
「僕と兄さんで、マシュマロに合いそうな食べ物用意したんだよ」
そう言って、銀河は持っていた袋を地面に下ろした。
そういえば、さっきから袋を背負っていたな。
銀河は中から、可愛いラッピングがされている包みを取り出した。
「これ、チョコクッキーだよ。このクッキーでマシュマロをサンドしたり、クッキーの上にマシュマロを載せて食べたりしたら美味しそうかなと思って、兄さんと二人で作ったんだ」
銀河が嬉しそうにそう言った。この兄弟、お菓子作りもできたのかよ。初めて知ったんだが。
「へぇ、美味しそうじゃん。それにしても、俺、お前たちがお菓子作れるってこと、
今初めて知ったよ」
俺は喜びのあまり銀河にそう言った。
「俺も俺も! 銀河すげぇじゃん!」
真白は、今にも食べたいと思っている様子だ。まるで、餌が目の前にあるのに
『待て』をされている犬のように、目を輝かせている。
「食べるのはマシュマロを焼いてからだよ」
銀河が苦笑しながらそう言った。
「おーい、持ってきたよ」
遠くからそう声がして、銀治と氷尾さんがバーベキューセットを持ってきた。
「炭火と着火ライター、それからトングも、係の人がくれたんだ」
銀治が炭火を地面に下ろしながら言う。
「おぉ、結構大きいんだね」
「よし、これでマシュマロが焼けるな」
銀河と真白は、口々にそう言った。これだけ大きいなら、思ったより多くマシュマロが焼けそうだ。
「じゃあ、火を点けようか」
氷尾さんは、みんなにそう呼びかけた。
「銀河君と銀治君は、炭火をコンロの上に置くのをお願いするね。真白君と雪斗は、網を載せるのをお願いしてもいいかな。僕は、コンロに火を点けるから」
「「「「はい!」」」」
氷尾さんは、そうテキパキと俺たちに指示を出した。さすが、リーダーシップが
あるなぁ。
銀河と銀治も、手早く炭火をコンロの上に置いている。手際がいいなぁ。この手際の良さも、お菓子作りで鍛えられたものだろうか。
「よし、もうそれくらいでいいよ」
氷尾さんが合図を出し、銀河と銀治は炭火をコンロに敷き詰めていった。
「じゃあ次は、僕が火を起こすから、二人は網を敷いてくれるかい?」
氷尾さんはそう俺たちに指示する。
「分かった」
「りょうかいですー」
氷尾さんは着火ライターで炭火に着火した。
「ある程度火が大きくなってから、網を敷くよ」
氷尾さんは、まるで先生だ。
「りょーかいですっ! 氷尾さんって、教えるの上手だよな。将来学校の
先生とか目指してるんすか?」
真白が明るい口調で氷尾さんに言った。急にフランクになるな、こいつは。
まぁ誰にでも明るいっていうところが、真白の長所ではあるけど。
「別に目指してるわけじゃないんだけどね。なんていうんだろう、ほら、
昔から雪斗の世話してたから、それで慣れているのかも」
氷尾さんは苦笑しながらそう言った。
俺のことを話されると、なんだか照れるな。
「なるほど。ってことは、雪斗は氷尾さんに甘えてた時期もあったってことか?
ちょっと見てみたいわ」
真白は意地悪そうな笑みを浮かべながらそう言った。全くこいつは、俺を揶揄ったりして……。絶対ろくな目に遭わないからな。
「だんだん火が大きくなってきた。もう網を敷いてもいいよ」
氷尾さんはそう俺たちに声をかけた。
俺たちは言われた通りにトングで網を敷いた。
「皆、準備お疲れ様。さて、あとは––––マシュマロを焼こう!」
氷尾さんがそう言ったのを皮切りに、俺たちはマシュマロを並べ、マシュマロを焼く体制になった。
「やった! 僕たちチョコクッキー焼いてきたんだよ。ね、兄さん?」
銀河がそう銀治に呼びかける。
「そうだよ。マシュマロを挟んでサンドにしてもいいし、クッキーの上に
マシュマロを載せても美味しいと思う」
銀治も、マシュマロとチョコクッキーを合わせた美味しい食べ方を紹介してくれた。
「あ、それさっき僕が雪斗と真白に言ったのに〜」
銀河が口を尖らせながら兄に文句を言った。
「いいでしょ別に」
「まぁいいけどさ」
この二人も変わらないな。
「さっ、どんどん焼こうぜ!」
「あぁ」
真白が俺にそう声をかけてくれたので、どんどんマシュマロを焼いた。
ふわふわで白かったマシュマロが、どんどん焦げ目がついて美味しそうになっていく。
「よし、焼けた!」
隣で真白がそう叫び、熱々のまま口に入れた。
馬鹿、そんなことしたら––––
「あつっ⁉︎」
真白が苦悶の叫び声をあげた。言わんこっちゃない。……熱々のまま口に放り込んだら火傷することぐらい、小学生でも分かるだろ。
「あはは、落ち着いて食べた方がいいよ、真白くん」
氷尾さんがそう真白に注意した。
「ほら、水飲み場で水でも飲んで、冷やしとけよ」
俺は真白に、水飲み場に行くよう促した。
「そうしとくわ……」
真白はトボトボと水飲み場に行った。
マシュマロ一個食べただけで火傷するなんて、ツイてないな、真白も。
「ねぇねぇ、雪斗。これ、美味しいから食べてみなよ」
そんなことを思っていると、ふと後方から声がした。振り向くと、銀河が
マシュマロをクッキーで挟んだやつを食べている。
「これ、ほんとに美味しいからさ。食べてみなよ」
銀治もオススメしてくれている。まぁ、自分たちが作ったものを勧めたくなるのは
よくあることだ。それに、銀治が何かをオススメするのは珍しいことなので、ノってみることにした。
「ほんとか? サンキュー、食べてみるよ」
言いながら、俺はマシュマロクッキーサンドを食べてみた。なるほど、クッキーがサクサクしていて、マシュマロも柔らかくて美味しい。それに加えて、マシュマロを焼いているので、いい具合に溶けている。マシュマロの柔らかさとクッキーのサクサク感が、絶妙なハーモニーを醸し出していて美味しい。
「美味いよ、これ!」
俺はそう二人に言った。
「そう? 良かったぁ」
二人とも、嬉しそうな表情をしている。やっぱり、自分が作ったお菓子や料理を誰かに食べてもらって、喜ぶ顔が見られることは、作った側の人にとってはこの上ない
嬉しさだろうと思う。
「えーなんか美味そうなもの食ってんじゃん! 俺にも食べさせてよ」
真白がそう言ってやってきた。もう火傷は大丈夫なのだろうか。
「真白、もう火傷は大丈夫なのか?」
俺はそう真白に聞いた。真白はニカリと笑って言う。
「おう、もう大丈夫だ!」
それなら良かった。全く、アホなところは相変わらずだな。
「真白も、これ食べてみろよ。双子が作ってきてくれたんだ、凄い美味しいからさ」
俺は真白にそう呼びかけた。
「おすすめは、マシュマロサンドだよ。もちろん、チョコクッキー単体で食べてみても美味しいけどね」
銀治がそうアドバイスした。
「おっ、サンキュー! じゃあまずはチョコクッキーだけで食ってみるよ。
……うんうん、美味いよ。サクサクしてて、食べ応えがあるな」
真白も二人のクッキーを絶賛している。
「もう一個食っていい? 今度はマシュマロをサンドして食ってみよっと」
「どうぞ。いっぱいあるから、どんどん食べてよ」
真白はクッキーをおかわりしている。俺ももう一個貰おうかな。
「そんなに美味しいんだね。僕も一つ食べてみていいかな」
そんなことを考えていると、氷尾さんもやってきた。
「どうぞ! 自信作ですよ」
銀河に促され、氷尾さんはクッキーを手に取った。
そして竹串に刺していたマシュマロをクッキーの上に載せた。
「マシュマロがいい感じに溶けていて美味しそうだね。じゃあ、
いただきます。……うん、溶けたマシュマロがサクサクのクッキーと
絶妙に合っていて美味しいよ」
氷尾さんもそう微笑みながら双子のクッキーを褒めた。
「そんなに喜んでもらえると、僕たちも作った甲斐がありました」
銀治がそう氷尾さんに言って、笑った。
「うわぁ、これも美味い!」
そう真白が言っているのが聞こえた。あいつはなんだか、幸せそうだなぁ。
「あちち、マシュマロが溶けちゃってる。ドロドロになっちゃった。失敗したなぁ」
ふと振り返ると銀河が竹串を眺めて残念そうな顔をしている。
「まぁ、一個失敗してもマシュマロはまだ沢山あるし。どんどん焼いていけば
いいだろ」
俺はそう銀河をフォローした。
みんなでワイワイガヤガヤと、マシュマロを焼いていく。
マシュマロは、あっという間に無くなっていった。
いつの間にか地面が、オレンジ色に染まっている。
「あ、もうすぐ終わりだね。片付けるの面倒だなぁ。このまま帰っちゃダメかな」
「それは流石にダメだろ。……にしてもやっぱ、片付けんのダルいなー」
銀河と真白がそう愚痴を言い合う。……銀河って、割と狡い一面もあるんだな。
「まぁまぁ、片付けも協力して一緒に頑張ろうよ」
二人を氷尾さんがとりなす。やっぱりこうやって、俺たちが揉めたときには
氷尾さんみたいな兄力のある人が一人いた方がいいな。
「そうだよな。じゃあ、最後まで楽しもう」
俺はそう言って、また一つマシュマロを頬張った。
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