初詣・おみくじ

『新年、あけましておめでとう〜!』


 新年になった途端、そう真白からメッセージが届いた。

俺は暖房の効いた部屋で、新年になった瞬間にジャンプしようかなどと

浮かれた考えをしていたが、それは真白からのメッセージで綺麗に吹き飛ばされた。


『あけおめ』


 俺は真白にメッセージを返した。すると、すぐに既読がつき、メッセージが真白から返された。


『そういや、おみくじ引きに行かねぇ? 俺の家、近所に神社あるからさ。

初詣もやって、おみくじも引こうぜ!』


 真白のメッセージの文体は明るかった。それって、今から行こうという事か?

流石にいくら新年だからといえ、今は深夜だし、流石に眠い。


『あのなぁ、いくら新年だからって、明日の朝とかじゃだめなのか?

もう眠いし、寝てぇんだけど……』


 俺はそう真白にメッセージを返した。


『そっか。確かに、今深夜だし、俺たちまだ高校生だしな……。じゃ、

明日の昼十二時神社に集合で!』


 もう寝正月する気だろこいつ。昼の十二時に集合って、こいつに限っては寝過ごした理由以外考えられない。


『いや、お前それ寝正月する気まんまんだろ。別に明日十二時集合でもいいけどさ』


 俺は真白に呆れつつメッセージを返した。


『おぉ、俺のボケに良いツッコミで返してくれた! 今年も、雪斗の

ツッコミ期待してるぜ!』


 ……もう、こいつは新年もボケたおす気しかしない。やれやれ、今年もツッコミは

俺が拾わなきゃダメなのかもしれないな。


『じゃ、明日の昼十二時神社で集合しような。じゃ、おやすみ!』


 真白はそんなメッセージと共に、パンダが寝ているスタンプを送ってきた。

使ってるスタンプは可愛いんだよなぁ。


 俺もおやすみとメッセージを返し、寝る準備を始めた。



      *



 翌日。俺は昼十二時に集合場所の神社に行った。


「あっ、あけおめー」


 真白はもう着いていて、俺を見るなり爽やかな挨拶をしてきた。


「おはよう。あけましておめでとう」


 俺も挨拶を返す。


「やっぱ寒いよな! じゃあ、早速初詣に行こうぜ!」


 真白はそう言い、鳥居を潜って境内を歩き始めた。


 やはり、神社の中は初詣をする人でいっぱいだった。途中、おしるこや

ココア、コーンスープなど温かい飲み物が売っている自販機には、

たくさんの人が群がっていた。


「やっぱ皆考えることは同じだよな。初詣には一月一日に行くことが恒例行事っつか……」

「あぁ。やっぱり、一年の最初は初詣だよな」


 真白と俺は互いにそう言い合い、賽銭箱に向かった。


 小銭を入れて、お辞儀を二回する。拍手を二回して、手のひらを合わせながら

お祈りをする。今年も健康になれますように……好きなゲーム沢山やれます

ように……恋人できますように……。


 最後に、もう一度お辞儀をし、初詣を終えた。


「よし、じゃあおみくじ引こうぜ!」


 真白はそう俺に言った。


「おみくじか。あんまりおみくじやったことないけど、やってみようかな」


 俺はそう呟き、早速おみくじを引いた。


「結果は……おっ、俺は大吉だ!」


 真白はそう喜びの声を上げていた。


「ふーん。あっ、俺は中吉だ……。まぁ、ほどほどってとこか」


 俺はおみくじを見て、そう言った。まぁ、大吉がきても嬉しいけど、

中吉は俺の身の丈に合ってる感じがして、悪い気はしない。


「そういえば、お前さっきの初詣何願った?」


 真白が聞いてきた。


「ああ、俺は、健康のことと、ゲームいっぱいできますように、っていう

こととか、恋愛ができますように……って願ったな」


 俺は真白にそう答えてやった。すると、真白はうんうんと頷き


「へぇ。なんていうか、お前の願い、めっちゃフツーだな。

俺なんて、ココアめっちゃ飲めますように、とか彼女いっぱい作れますように

とか願ったよ」


 と言った。こいつらしい願いだな。特に、ココア沢山飲めますように、って願う

ところとか……。どんだけココア好きなんだよ。


「お前らしくていい願いだな。……そうだ、ココアなら自販機で売ってるぞ。

俺が奢ってやろうか?」


 俺はココアが自販機に売っていることを思い出し、真白にそう聞いた。


「えっマジ⁉︎ いいのか⁉︎ ありがたや神様仏様雪斗様……」

「いや、拝む対象間違ってるだろ。ここ神社なんだし、神様に拝みなさいよ」


 俺を有難い存在として拝むんじゃない。まったく真白って奴は……。


 真白の通常運転のツッコミも捌きつつ、俺は真白にココアを買ってやった。


「サンキュ! あー、あったまるわ〜!」


 真白は俺が奢ったココアを飲みながら満更でもない表情でそう言った。


 こんなに喜んでもらえるのなら、俺もココアを奢ったかいがあった。


「あ、俺そろそろ帰らなきゃ。家で、親戚と家族が待ってるんだ。一緒に昼飯

食うからさ」

「そっか。じゃあそろそろ解散するか。次会う時は始業式の日になー!」


 俺は、昼食を家族と親戚で食べる、ということを思い出し、真白にそう言った。

真白は頷き、また始業式の日に会おうという話になり、その日は解散した。


 なかなか、悪くない一年の始まりかもしれない。


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