今年のクリスマス

「そういえば、真白。お前今年の冬休みはどこか行くのか?」


 俺は真白にそう話しかける。


「うーん、今年はあんまり旅行とか行く予定はないな」


 真白は俺に言った。真白が長期休みに旅行に行かないのは珍しい。

こいつは、長期休みになると必ずどこか旅行に行く奴なのに。


「へー、珍しいな。真白は、長期休みになると必ずどっか行ってるって

イメージがあるけど」

「別に、毎年ってわけじゃなくて、行かない年もあるよ」


 真白は俺に言った。


「お前ん家は?」

「俺も別に、家族旅行の予定はないな」


 真白に問われ、俺はそう返答をした。しかし、家族旅行はしなくとも

一人で旅行など、結構してみたい気はする。


「それはそうと、真白が旅行に行かないのなら、今年のクリスマスはぼっちじゃなくて安心したぞ。今年のクリスマス、どう過ごすの? って尋ねられても、友達と一緒に過ごすって返せばいいだろ」

「ははぁ、なるほどな。良い回答だ」


 俺はそう得意げに言ったので、真白もどうやら感心したようだ。


「またバカコンビが変な話してる……。相手にしないようにしよう」

「……そう? 楽しそうだけどな」


 なにやら俺の噂が聞こえるのは気のせいだろうか。俺は声がした方に目をやる。


「これでクリぼっちは回避! ……あれ、雪斗どうかしたのか?」

「あぁいや……ちょっと俺の噂が聞こえた気がしたんだが、気のせいだったかな」


 真白が俺に気づき、声をかけてくれたが、俺はさっきの噂は幻聴だと思うことに

した。


「それより、今月の二十四日は何やるか決めようぜ!」


 真白が俺の肩を組んで言った。


「やけに積極的だなお前。そういうキャラだけどなお前は」


 俺は呆れながら真白に言う。


「なぁなぁ、早く! 俺、二十四日ヒマなんだよ〜!」


 真白は土下座をしそうなほどの勢いで、俺に迫ってきた。


「分かったから落ち着け! 声でかいんだよお前!」


 俺は周囲の視線を感じ、慌ててそう言った。


「サンキュ! 恩に着るぜ!」


 真白は満面の笑みでそう言った。



    *



 二十四日。ついにクリスマスイブがきた。


「今ごろ、リア充とかどうしてんだろうなぁ」


 ふと、真白がそんなことを言い出す。

真白の家に来たはいいものの、ゲームも遊び尽くし、晩御飯のチキンやケーキも

食べ終えたので、手持ち無沙汰になってしまったところだった。


「リア充のこと考えても意味ねぇだろ……」


 俺は真白の発言に呆れ、ため息をついた。クリぼっちを回避するために

真白の家に来たはずなのに、真白こいつがそんなことを言い出したら

元も子もない気がする。


「そもそも、いつからクリスマスは恋人の行事になったんだ?」

「落ち着け。そんなこと考え始めたらキリがないぞ。まぁ、ぶっちゃけ俺も思ってたことだけど……」


 だめだ。こいつのどうでもいいことを探究する世界一要らないスイッチが入った。

もうこうなると止まらないな、こいつは……。


「本来、クリスマスはサンタさんが子供達にクリスマスプレゼントを配る行事のはずだろ? それがいつのまにか……」

「どうどう。落ち着け」

「俺は馬か⁉︎」


 少しでも真白の気を散らそうと、わざと馬を宥めるかけ声(?)を使ってみたんだが、良いツッコミが入った。


「今のは中々良いツッコミだったぞ。俺のボケに瞬時に反応できるなんて、流石だな」


 俺は真白を素直に褒めた。


「雪斗の今の言葉を聞いたら、なぜかリア充のことなんてどうでもよくなってきた……。

じゃ、どうでもいい雑談も終えたところで! 雪斗、プレゼント交換しないか?」


 真白は俺にそう言い、隠し持っていた赤い包みを俺に差し出してきた。


「そういえば、プレゼント交換の時間があったな……。すっかり忘れてたよ」


 俺はハッとし、急いで緑の包みをカバンから取り出した。

プレゼントを用意したのにも関わらず、忘れていたなんて、我ながら抜けている。


「おいおい、忘れんなよ……」

「悪かった。これが俺のプレゼントだ」


 俺と真白は向き合う。


「じゃ、改めて––––」

「「メリークリスマス!」」


 俺たちは二人同時にそう言い合い、プレゼントを交換した。


 隣の家の、派手な飾りのイルミネーションがチカチカと眩しかった。














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