寒すぎる
翡翠琥珀
寒すぎる
「寒っ……」
俺はそう呟いて、白い息を吐いた。
今年も俺の嫌いな季節がやってきたな。俺はまたため息を吐いた。
早く学校行って、教室に入るか。教室に入れば、暖房も効いていて暖かいだろうし。
学校へと歩を進めると、しばらくして茶髪の人影が見えた。
その人影は、俺を見つけると笑顔になり、俺に駆け寄ってきた。
「よぅ、雪斗! 今日も寒いな〜」
どうやら人影の正体は、俺の友人の真白だった。
「あぁ、今日も寒いな」
俺はそう真白に相槌を打つ。正直、寒くて早く学校に行きたいという
気持ちが強すぎて、相槌が適当になってしまっていた。
真白には悪いが、学校に言ってから話をしたい。
「今日めっちゃ寒いよな! おかげで朝ごはんに温かいココア飲んじゃったわ」
「……あぁ、すごい寒いよな。真白、悪いんだが教室に行ってから話をしないか?」
俺は真白にそう言った。寒すぎて指が震えている。
「あはは、雪斗って大袈裟だなぁ! そんなに寒くなくね? あ、もしかして
あれか? 最近暑かったからその反動で寒さに敏感になったとか?」
真白は勝手な想像をしていたが、残念ながらまったく違う。
「いや、違ぇよ。俺は元々寒がりなんだ。忘れたか?」
俺は真白に言った。
「そうだったっけ? 忘れてた」
真白はぽかんとした表情で言った。もうこいつと会ってから一年半くらい
経つけど、こんな性格だったっけ。
「……お前こそ、寒さで忘れっぽくなってるんじゃないのか?」
俺は、少し言葉に棘を混ぜて、真白にそう言ってみた。
すると、真白はびっくりしたような表情でこちらを見つめ
「雪斗も、珍しく冗談言うんだな」
と笑った。
失礼な、俺だって冗談くらい言う。どれだけ冷徹人間だと思われているんだ。
「俺のこと、どんだけ冷徹人間だと思ってるんだよ。ほら、学校行くぞ」
「おい、ちょっと待てよ。いきなり走んなって!」
俺は肌が凍てつくような寒さに耐えきれず、先に通学路をダッシュして
学校へと向かった。
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