真白の提案

「みんなでマシュマロを焼こうぜ!」


 真白が突然そう言い出した。何を言い出すのかと思えば、いきなりそんな難しそうなことを言うなんて。


「マシュマロ焼くっつっても、材料とか焼く器具? とか、色々用意しなきゃいけないだろ」


 俺は真白にそう言う。


「そもそも、なんでマシュマロなの?」


 銀河がそう言う。確かに、なんでマシュマロを焼くんだろう。真白のことだし、テレビなんかで紹介されてたものに感化されたに違いない。


「お前どうせ、テレビとかで紹介されてたから、自分もやりたくなったんじゃないのか?」

「それはありえるね」


 俺は真白に思ったことをそのまま言い、それに銀治も同意する。


「うっ、流石だな雪斗! 俺の考えてることが分かるなんて、お前はエスパーか⁉︎」

「いや、お前の考えていることなら大体わかるって」


 真白がすかさずボケだし(そもそもボケと言えるのかも怪しいが……)

 俺はすかさず真白にツッコミを入れる。


「あはは、雪斗と真白の漫才(?)は相変わらず絶好調だね。

 ……でもさ、雪斗。マシュマロを焼くなんて、ちょっと突飛すぎるんじゃないかな。

 第一、材料とかも用意しないといけないし」


 銀河が冷静に真白に意見をする。やっぱし、俺と真白のやりとりは他の奴からも

 漫才に見えてるのか。

 余計なことを考えつつ、銀河が言ってくれたことをもう一度思い出してみる。


「マシュマロを焼く機械……あと、マシュマロそのもののお金も必要だし。

 あ、でもマシュマロを焼くのは焚き火とか? じゃあ焼くときの費用の心配は要らないか?」


 俺は真白にそう尋ねる。すると真白は


「マシュマロ焼くのは、ホラ、キャンプファイアーみたいな感じで焼こうとしてたんだよな」


 と言った。やっぱり焚き火じゃないか。


「マシュマロくらいは買えるだろ! あとは火を起こすだけだし、火をつけるのは

 ライターか何かでつければいいだろ」


 そう楽観的に言った真白をよそに、銀治が言った。


「でもさ、焚き火と言ったって、公園でやるわけにもいかないでしょ。危ないし」


 そうだ。銀治は重要なことを指摘してくれた。俺たちの住んでる地区の公園は

 火気厳禁だ。そうしたら、焚き火をできるフィールドは限られてくる。


「あっ、僕たちの学校の近くにちょっとひらけた広場があるでしょ? あそこは、確か許可を取れば、焚き火とかできるはずだよ。あそこはバーベキューできるし、道具も貸し出してくれるって、広場の掲示板に書いてあったのを見たよ」


 俺がどうしようかと考えていると、銀河が助け舟を出してくれた。

 なるほど、俺たちの学校の近くの広場は盲点だった。確かに、俺も、あそこの広場を通った時に家族連れがバーベキューを楽しんでる光景を何度か見たな。


「マジか! やった、これでマシュマロできるじゃん!」


 真白が、まるで小学生のように喜んでそう言った。


「でも、一応監督的な人がいないと落ち着かなくない? 僕たちだけでマシュマロ焼いてなにかトラブルがあっても困るし……」


 浮かれる真白に、銀治が釘を刺した。確かに銀次の言う通り、監督というか保護者的な存在がいないと不安だな。トラブルが起こって火事にでもなったら大変だ。


「じゃあ、誰か信頼できる大人を呼ぶ? 誰かのお父さんやお母さんとか」


 銀河がそう提案してくれた。しかし、都合が合うかどうかも分からない。


「でも、親側の都合が合うかどうかも分からないよね。ちなみに、僕達の親は、仕事が忙しいから十中八苦ダメだと思う」


 銀治が俺が思っていたことを代弁してくれて、ちゃっかり自分たちの親はダメだと

 断りを入れた。抜け目ないな、コイツは。


 俺の親も、母さんは普通に仕事で家にいないことが多いし、父さんだってそうだ。

 他に、頼れる大人はいるか? 俺は、一生懸命あてになる人物を考えた。


 ……あ。一人だけ、いる。


 俺は、みんなに提案する。


「俺、ひとり頼りになる大人を知ってるよ」

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