概要
普段とは違う、たまたまの行動が二人を結びつけたのかもしれない。
優季奈は病室のベッドの上で半身を起こし、静かに窓の外を眺めていた。
寂しげな横顔に、織斗は思わず立ち止まり、魅入ってしまった。
ふと振り向いた優季奈と目が合う。
織斗の口から零れ落ちる。
「天使が、いた」
不思議な縁で繋がった二人は、優季奈の病室で互いの想いをゆっくりと育んでいく。
互いに秘めた想いは心に閉じ込めたままだ。
そんな二人に別離の時がひたひたと迫っているなど、この時には知る由もなかった。
再び季節は巡り、出逢ってからおよそ一年、非情なまでに二人の間は引き裂かれていった。
織斗の前に広がる世界は、この瞬間、灰色に染まってしまった。失ったものがもう一つ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!瑞々しく透き通った花びらのように美しい純愛物語。
まずタイトルが美しいなと思いました。第一章までを読んでの感想になりますが、読み進めていくごとに、タイトルに込められた水無月さまの想いが伝わってきます。少年少女の繊細な心情が痛いほど伝わり、微笑ましくなったり、切ない想いで胸の奥がきゅっと締めつけられたりします。神月代櫻と絡み合った情景もまた大変美しく描かれています。
「生きる」ということ、そして「死」との向き合い方を考えさせられる物語でもあります。また、第一章からも淡いファンタジーを感じられます。ファンタジーが今後どのように展開されるのかも注目したい楽しみな要素のひとつです。
当たり前じゃない日常生活、そして身近にいる人を大切にしたいと改…続きを読む - ★★★ Excellent!!!桜が導くボーイミーツガール、待ち受ける二人の未来は?
とても心に響く恋愛小説です。
人間の欲望剥き出しのドロドロしたものもいいけど、純粋で心が清められるこの作品を読んでいると、ああ、自分にもこんな時があったなあと思い出させてくれます。
読んでいてとても感情が揺さぶられるんです。
何度も泣かされたし、くすっと笑わされたし、のめり込んでしまう作品です。あと電車の中とかでは読めません。目頭が!になりますよ。
いわゆるボーイミーツガールですが、これでもかというほど困難が待ち受けています。それを周囲の協力を得ながら乗り越えていきます。
最後に待っている運命とは?
悲しみなのか、喜びなのか、それとも。
この先を一緒に見守りませんか。
本当に多く…続きを読む - ★★★ Excellent!!!泣いて、笑って、感情を揺さぶられる美しい純愛物語にぜひ触れてください
本当にピュアできらきらした純愛物語です。
地の文章の丁寧さと、思わず感情を揺さぶられる会話文がうまくマッチして、物語の中にどんどん引き込まれていきます。
最初は幼い二人の恋物語です。それが思わぬ病のせいもあって悲しい結末を迎えます。
そこから幾年かの時が過ぎ、再び物語が動き出します。
純粋なドラマなのに、そこはかとなくファンタジー色が見え隠れしながら、第一章を終え、その後は現実の向こう側の世界も広がっていく、そんな気がしています。
そんな気がするというのは、最新話まで来て、かなり核心めいたところにあるのですが、まだ完結を迎えていません。
きっと何度も泣いて、笑って、感情を激しく動かさ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こんな恋愛小説は Web小説ではそうそうお目にかかれない!
壮大な本格ファンタジー物語を書かれている作者様。
その作者様が、現代の恋愛ジャンルで新作を公開されていると知り、失礼ながら最初は興味本位で開きました。
いざ開いてみれば、広がるのは中学生の甘酸っぱい初恋のはじまり。そして余命僅かの悲恋確実の展開。
しかし、ただのお涙頂戴の恋愛で収まらないのは、表現するには難しい医療に関する内容に妥協なく向き合う文章と、二人を取り巻く大人達の覚悟が誤魔化しなく書かれているからだと思います。
更に特筆すべきは、二章、三章と進むにつれ、ファンタジー要素が強く絡み始めること。
現実とは思えないような現象を前にしながらも、主人公とその周りにいる人々が生命と想いに向…続きを読む - ★★★ Excellent!!!奇跡と純愛、喪失と邂逅、無垢なる恋の物語。
少年が出逢ったのは『天使』のような少女だった。
物語の舞台は病室から始まり、そこで主人公の少年がヒロインと運命の出逢いを果たす。誰もが憧れ、微笑ましく思えるようなボーイミーツガールのお話。
だけど、彼ら二人の出逢いは偶然ではなかったのだと思わせてくれます。きっとこの巡り合いは物語の主軸となる『神月代櫻』が導いた奇跡なのだと、読み手に語り聞かせるようでした。
透き通るようにあまりにも純粋無垢な二人が互いの心を通わせて恋に落ちる。病床に伏すヒロインはいつ死を迎えてもおかしくない中で、精一杯生きて愛する者との時間を大切に過ごす。
その物語の最中で差し込まれるお互いの独白は、切なく胸を締め付け…続きを読む - ★★★ Excellent!!!端正な文章でつくり上げられた、唯一無二の本格恋愛小説
骨太な本格ファンタジー小説の書き手として固定ファンをつかんでいる筆者様。そのイメージが強かったので、この作品は意外に感じるととともに、読みはじめてすぐに納得もしました。「水無月さんが恋愛小説を書くとこうなるのか」と。何といっても端正で精緻な文章が素晴らしいです。高精度なガラスブロックを丁寧に積み上げたような感じです。病院などの舞台設定が作り込まれているのも流石です。主人公の少年少女の家族関係をしっかり掘り下げているのも良いですね。物語に現実の手触りをもたらし、独特の味わいになっています。カクヨムにはなかなかないタイプの本格恋愛小説、じっくりと腰を据えて読みたいです。