「諸君に涙があるのなら、今こそそれを流すときだぞ」――シェイクスピア
- ★★★ Excellent!!!
カクヨムで公開されている作品のうち、絶対に電車の中で読んではいけないものが二種類あります。ひとつは、爆笑必至のギャグ・コメディ作品。そしてもうひとつは、号泣必至の感動作品。そして本作は、後者に属します。
本作の作品ジャンルは「恋愛」ですが、この作品を単なる「出会いから始まる少年少女の恋物語」と説明するのは、樋口一葉の『たけくらべ』を「幼馴染モノ」の一言で片付けるようなもので、作品の持つ魅力の万分の一も語れていません。
病弱のヒロインと偶然出会った少年。二人の気持ちは好意となり、それがやがて恋愛感情に育つ頃、ヒロインに残酷な運命が襲い掛かります。その衝撃に主人公は声を失いますが、その数年後――。
いろいろなファンタジー要素(現代ファンタジーにして和風ファンタジー)はありますが、その根底にあるもの――少年少女を突き動かす行動原理は、永遠不変の黄金律である「愛」。
主人公たる少年少女の心の動きと愛のかたち、その家族や友人たちとの関係、そして少年の決意。幻想的な世界観に彩られたこれらのドラマが、「読ませる文章」で読者の前に繰り広げられます。
泣ける恋愛ものをお探しなら、本作で決まりです。涙を流しても差し支えない環境で、存分にご堪能ください。