概要
心配そうに背中を見つめる仲間たちに見送られながら、やむなく古巣の町へと帰ってきたシドを待っていたのは、「おめえにやる仕事はねえ」という厳しい言葉。
そして、「ベテラン」というにはだいぶん悲しい、「経歴が長いだけの冒険者」という重苦しい現実。
なぜなら冒険者歴二十二年のベテラン冒険者シド・バレンスは、冒険者としてはかろうじて『一人前』と呼べる程度に過ぎない《銀階位(シルバー・ランク)》の冒険者。
それは一端の冒険者でこそあれ、それ以上の高みへ昇れるような冒険を果たせなかった冒険者ということ。
にもかかわらず、いつまでも《冒険者》という立場にしがみつきつづけた
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!真っ当に生きていれば、きっといいことがある。そう思わせてくれる物語
一見、よくある剣と魔法の世界のファンタジーに見えるが、そんな簡単な言葉でこの物語を語るのはもったいない。
読み始めれば、卓越した文章力と、練り込まれた世界観、そして様々に織り上げられた人間ドラマに引き込まれること間違いなし。
主人公のシドは、長年「やっと一人前の冒険者」という程度のシルバーランクの中年冒険者。
その胸にあるのは、上のランクに上がれずにいることの証である、くすんだ銀のバッジ。
彼を知らない人間は、その銀を揶揄する。だが、彼と時間を共にしてきた人間は、彼の人柄、その隠れた功績を知っている。
そこに至るまでの物語と、これから紡ぐであろう物語をしたくなる。
これぞ王道ファンタジ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!くすむほどの色になった時間があるからこそ頼りになる
ベテラン冒険者である、シド。
永く、シルバーランクであったためその銀はくすんでしまっている。
揶揄も含めて、オクスドナイズドシルバーなどと呼ばれている。
けれどもそれは、彼が時間を無駄にしたき事を意味するものではなく、寧ろ刻んだ時間を明示しているようにも見える。
シドを知らぬ人は、彼のくすんだ銀を見て嘲笑う。
シドを知る人は、彼の再会を喜び称える。
その再会が彼の為人をあらわにし、また新たな出会いで彼の人柄が隠しようもないものだ。
この物語は、シドがシルバーランクとして過ごすことで誰かを救う冒険ではなく、彼自身の為の冒険に出るものだ。
一見便りなさげでやっぱり侮られてばかりのシドだが、一…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人が再び歩き出す、正の再起を描く上質なストーリー
この物語は、成り上がりや下剋上のようなマイナスからの再起ではありません。
主人公は、良い仲間と良い冒険を続けてきたものと思われます。
ただ人生の転機、互いがよりよく生きるための分かれ道がきてしまったのです。
きっと読者の皆さんも、進学、就職、結婚など
誰も悪くない、そんな別れを経験してきたことでしょう。
そんな誰もが持つさびしさに向き合い、自分がどうありたいのかを思い、また歩き出すこの物語はファンタジーであってもきっと貴方の心に寄り添ってくれるでしょう。
筆力も描写も素晴らしく、恰好良い描写も秀逸。
テーマ的にスロースタートではありますがそれ以上の面白さがあると思います。
おススメです! - ★★★ Excellent!!!主人公はイケオジ・お人好し・いぶし銀!とにかくカッコイイし渋いんです!
この物語の最初の魅力は、やはり主人公だと思います。
主人公シド・バレンスは、一見すると階位(ランク)の低い冴えないおっさん冒険者です。でも、その実は、超一級の実力と、いつも自分以外を優先してしまうほどの優しさを持ったイケオジでした。
数々の輝かしい実績も功績も他人に譲り、人の為に隠してしまう。シドの背中は、彼を知っている者が見れば何よりも頼もしいことでしょう。
そんな主人公の魅力が、じんわりと物語全体から漂ってきます。
一度でも、この物語を読めば彼に惚れること、間違いなしです。
女性なら、きっと彼のかっこよさと渋さに惚れちゃうでしょう。
男性なら、彼のかっこいい生き様に憧…続きを読む