街の涯 　- まちのはて -

二十一世紀初頭 “ C ” は発生した。
“ C ” とは何であり、何ゆえ発生したのか？ 今もって何ひとつさだかではない。ともあれそれから霧がやってきて世界のすべてを覆い隠した。

霧の中に取り残された人びとは 多くが行方不明となり、生還したものの大半が発狂していた。
やがて霧に閉ざされた地域からの電波通信が途絶するにおよびインターネットが消失した。
霧は時間と空間の感覚を狂わせ、人間は距離と歳月に関するあらゆる尺度を喪った。

こうして全世界のあらゆる体制と秩序は混乱のうちに崩壊し、
確かなものは何ひとつなくなった。
そして
それからどれほどの時が過ぎたのか誰も知るものはない
ある集落では人知れず数千年の歳月が過ぎ去っている
しかしある都市では “ C ” 到来より未…続きを読む