合コンに行ったら100%元カノが隣に座ってくるんだが?
ストレート果汁100%りんごジュース
第1話 元カノ①
「それじゃあ盛り上がっていきましょ〜!」
「「「いえ〜!!」」」
頭の悪い音頭にみんなが合わせながら、飲み会を始めた。
飲み会というか合コンである。多くの男はさっそく女に話しかけに行ったりしている中で、俺は隅っこでチビチビと水を飲んでいた。
はぁ、帰りてぇ。
「どうしたのさ陸! 盛り上がっていこうよ!」
どんよりとしている俺の横で俺の背中を叩きながらそう言うのは数少ない友人の1人である宇海。
俺を今日この場に呼んだ人間でもある。
「どうしたって合コンなんて聞いてねぇよ。飲みだって言うから来たのによ」
「も〜いいじゃん! 灰色の大学生活を過ごすつもりなの!?」
「お前がいたら灰色になんねぇからそれでいいじゃん…………」
「えっ、それって…………」
何故か頬を染めてそう言う宇海を横目にもう一度水をぐいっと飲む。
すると、そんな俺たちに3人ほどの男が近づいてきた。
「ねぇ君、そんな愛想悪い男なんか放っておいて俺たちとお話ししようよ」
普通なら、男2人しかいないのに何を血迷ったことを言っているのか気になるところだが、この男達が勘違いしてしまうのも無理はない。何故なら、それほどまでに宇海は可愛いのだ。男なのに。大学入ってから2年友人をやっているが、そんな俺ですら未だに本当に男なのか確信が持てない。
ちなみに今も、俺の袖を掴んで後ろに隠れながら身を震わせている。だからいちいち所作が可愛いんだって。
「すまん、コイツ男だぞ」
仕方なく男たちにそう答える。
「「「…………マジで?」」」
「あぁ。こんな可愛いが普通に男だ」
「マジかー」
思いの外素直なのか、そのまま別のところに行く男達を見送ってから2人でホッと息を吐く。
「陸、ありがと〜」
「怖いならこういうところ来るなよ。お前、絶対狙われるんだから」
「男なのに?」
「自分の美貌自覚しとけ」
「そんな…………美人、だなんて」
「言ってねぇなぁ」
思ったけれども。
「というか陸は彼女作らないの?」
俺の顔を覗き込みながらそう聞いてくる宇海。
「ん? あぁ、大学では作るつもりないな」
「なんで?」
「俺が彼女を作ると、最後はリンチエンドだからなぁ…………」
「リンチエンドって何!?」
「文字通り親衛隊の皆様に血祭りにされる」
「…………されたことあるの?」
「ある。3回」
「3回も!?」
「もう慣れたもんだよ」
「この世の中には慣れちゃいけないことってあると思う」
あの時はすごかったよなぁ。
俺は、告白してくれた人と取り敢えず一度は付き合いたいと思っている。告白し
自体嬉しいし、自分が相手のことを好きになることができたら幸せだからだ。そんなわけで、俺は過去に3回告白されたことがある。しかも告白してくれた人全員が可愛かったから親衛隊とかいたんだよな。その人達にリンチにされた。
「ふふっ、何やら面白い話をしていますね。私も混ざっていいですか?」
下を向きながら話していたので、急に上から声がかかってきてびくりと身体を震わせる。
「いや、聞いても面白くない話だ…………か…………」
話しかけてきた人物を見ながら返事をしようとしたが、その言葉が途中で出て
こなくなった。
「陸? 固まってどうしたの?」
何故なら…………何故なら、俺の目の前で微笑んでいる女は、俺が中学の時に振られた元カノだったのだ。
♢
宇海を女と勘違いした男共の第二陣が来ると、固まった俺は使い物にならず、宇海はあれよあれよという間に男共に連れて行かれた。最後の方、俺に助けを求めていたような気がしたが、俺を騙して合コンに連れてきた罰として見て見ぬふりをした。
「隣、いいですか?」
「あ、あぁ、いいけど」
居酒屋には似合わない上品な仕草で俺の隣に腰を下ろすのは、中学時代2年ほど付き合っていた山崎玲香。立てば清楚、座れば清楚、歩く姿はマイエンジェル、と学校の男子には言われていたが、実際その通りだと思う。透き通るような肌にシャンプーの広告でもやってるんですか、と聞きたくなるほど綺麗なロングヘアー。
染髪が禁止されていた中学の時より髪色が明るくなっているが、それ以外は中学時代からそのまま大人に変わったよう。いや、少し大人っぽさが出ている。
「久しぶりですね」
「そうだな。こうして話すのは5年ぶりくらいか」
「いえ、4年243日6時間23分ぶりですね」
「…………そうだっけ」
そこまで正確な情報は求めていなかったが、さすがは成績優秀だった玲香。よくそこまで覚えていたな。少しゾッとしたけど。
「お変わりはありませんでしたか?」
「身体の方は元気だったな。玲香は?」
「問題ありません」
「それならよかった。それにしても玲香が合コンに顔を出すなんて思わなかった。変わったんだな」
中学の時はあまり人と話すのは得意ではなかったが、合コンに参加しているならそれは克服したのだろう。
「いえ、陸くんとお付き合いをしている時から何一つ変わっていませんよ。今日だって偶然、たまたま来ただけです。合コンに参加するのは初めてですし。陸くんこそ珍しいですね。こういうわちゃわちゃしたところはあまり好きではないと思っていたのですが」
「宇海…………あぁ、さっきの男な。アイツに騙されて来たんだよ。タダ酒に引っかかった」
「男の子?」
「あぁ、アイツ、ああ見えて男なんだよ」
キョトンと首を傾げる玲香にそう説明する。やっぱり初見だと女の子だと思うよな。
「…………そうですか。ふふっ、それにしても飲み過ぎは良くありませんよ」
「気をつけるよ」
そう言うと、玲香はよろしい、というように笑う。
「陸くんは身体つきも変わりましたね。前よりもっと逞しく、かっこよくなりました」
俺の身体に頭を寄せながらそう言う玲香。思っていたよりも激しいスキンシップに少し鼓動が早まる。
「ちょ、れ、玲香」
「ふふっ、ごめんなさい。少しからかってしまいました。私たちはもう、別れていますもんね」
そう、寂しそうに苦笑する玲香に心臓がギュッと締め付けられたかのような錯覚に陥る。
そんな俺の様子を感じ取ったのか、玲香は俺の頬に手を当てて顔を近づけてきた。
「陸くんは気に病まないでください。フッてしまったのは私の方なんですから」
俺が玲香と付き合うことになって、校内には大きな衝撃が走った。玲香は陰でファンクラブができるほど人気があったにも関わらず、俺みたいな一般人と付き合うことになったからだ。
そこから始まる俺に対しての執拗な嫌がらせ。
特定のグループならまだしも、それを学校中からやられるのだ。まぁ、俺はかなり鈍い方なのでそういうのにはあまり気づかなかったのだが。
そんな鈍い俺に痺れを切らしたのか、玲香と付き合って1年半が過ぎた頃、俺は先輩に呼び出され、俺はそこにいた先輩達に殴られまくった。それが表に発覚し、先輩連は高校の行き場をなくしたらしいが、詳しいことは知らない。俺はその時全治2ヶ月の怪我を負った。
その時になって始めて俺がいじめられていた事実を知った玲香は、病室にお見舞いに来た時、泣きながらこう言った。
「大好きな陸くんには辛い思いをしてほしくないんです。私といることで辛い思いをさせてしまうのなら…………ごめんなさい…………別れましょう」
後にも先にも玲香の涙を見たのはこの時だけだ。
「私、あの時から何も変わっていません。陸くんのことが大好きなままの私です!」
ぐいっと距離を詰めながら、そんな嬉しいことを言ってくれる玲香。
心拍数が一気に早くなったのを自覚しながら俺は次の言葉を待つ。
「陸くんはその後に彼女を作っていたようですけど」
時が止まった。
[あとがき]
初投稿になります!
まだまだ拙い上にシステムもよく分かっていませんが、頑張っていくのでよかったら星とフォローお願いします!
感想も沢山お待ちしています!
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