第18話 緊急会議

【まえがき】


 すみません、半年以上開けましたが更新再開します。


 こんなに間隔開けてしまって申し訳ないんですが、よければこれからも読んでもらえると嬉しいです。



「二人に聞いてほしいことがある」


 宇海と徹夜で映画鑑賞をした翌日、俺は朝っぱらから玲香と凛の二人を喫茶店に呼び出し、神妙な面持ちで口を開いた。


「なんでしょうか?」

「なんだい?」

「宇海…………女の子かもしれない」

「「なんだそんなこと(です)か」」

「気づいてたの!?」


 俺が周りに他のお客さんもいることを忘れ、大声でそう叫ぶと、二人は呆れたように俺を見てきた。


「気づいていなかったのは陸くんくらいですよ」

「陸は時々ポンコツになるからな」

「凛にだけはそれ言われたくないんだけど」

「なんでだ!!」


 憤慨する凜を置いて、俺は大きくため息を吐く。


「正直まだ感情がおいついていない…………」

「ショックなんですか?」


 アイスティーを飲んで、それをコースターの上に置き直してから玲香は俺に聞いてくる。


「ショック……っていうか、まだ受け止め切れていないのが大きいんだと思う」

「隠されていたことがショックなんですか?」

「いや…………そういう理由じゃなくてどういう風に接すればいいのかが分からない。宇海にとっちゃ、触れてほしくないことかもしんないし。それで宇海とはまだちゃんと話せていないんだよな」

「ん? どういう経緯で分かったんだ? 彼女が何かやらかしてバレたんじゃないのか?」

「そんなんじゃないよ。凜じゃあるまいし」

「さっきからボクの扱いがひどくないか!?」


 憤慨してテーブルの向こうからつかみかかろうとしてくる凜をいなしながら、俺は二人に説明する。


「実は、昨日、二人で朝ご飯を食べた後、そのまま洗い物を済ませて街に出たんだ」

「な…………なんて羨ましい!!」

「やはり……無理やりにでも陸を私の家にとどまらせるべきだったか……」


 何やらダメージを受けている2人に、俺は昨日の状況を事細かに伝えるため、話を続ける。


「女子が沢山並んでいるパンケーキ屋さんに行ったんだ。雨にも関わらず長蛇の列が出来ていてな。しばらく待って入り、俺はコーヒーを、宇海はカップル限定のパンケーキを頼んでいた」

「そんな…………まさか、私がずっと行きたかったパンケーキ屋さんでしょうか……? 私がこの羽虫と水族館に行ってる間にそんなことがあったなんて…………なんで私はペンギンを見に行っていたんでしょう……」

「アイツ……ぶっ殺す!!」


 目が怖くなった2人。


「まぁ、そこまでしたらさすがの陸くんでも察しますよね」

「いや、その時は気づかなかった」

「「なんで(ですか)?」」


 コイツマジか? みたいな視線を一身に受け、縮こまる俺。


「いやだってアイツそもそもの見た目が女の子ぽかったし普段からこういうことをしてたんだろうな、って考えたら特に疑問にも…………思わなかったんです…………すみません…………そんな刺すような目で見ないでください…………」


 二人は同時にため息を吐いて、同時にそれぞれの飲み物を飲んだ。行動そっくりだな……仲良しか?


「まぁ…………陸くんならそうですよね」

「陸ならな…………」

「なんでそんな諦めた顔してんの? …………まぁ、話を戻すけど。……それで、パンケーキを食べ、近くのレンタルショップで面白くないサメ映画を大量に借りたんだ」

「なんで面白くないと分かってるのに借りたんだ?」

「宇海の趣味」

「あぁ…………なるほど」


 納得したように頷く二人を見て、俺は話を進める。


「それで、帰り道にコーラとか、ポテトとか、ポテチを買い込んでから家に帰って二人で映画の鑑賞会を始めたんだ」

「陸くんとパンケーキを食べ、街ブラデートをした挙句、一緒にスーパーに買い物デートをし、さらにはおうちデートまで? …………許せない」

「さすがに…………調子に乗りすぎているようだな。後でと言わず、今すぐにでも懲らしめてやろうか」


 俺が話を進める度、この周辺の気温が下がっていっているのは気のせいだろうか。


 絶対零度の息を吐いていそうな二人の機嫌が直るまで、俺は話を止めて手元にあったアイスコーヒーを啜る。


 しばらくして、理性を取り戻し人間に戻った様子の二人を観測すると、俺は話を佳境に進める。


「そんで、そのサメ映画が3本目に入り、当たり前のようにビーチにサメが出てきたところで、宇海が寝てな。俺にもたれかかってきたんだ」


 俺がそう言うと、二人は揃って頭痛がするように頭に手をあてた。


「つまらないのにどうしてそういう映画を借りるんですか?」

「つまらんものにわざわざお金を払って見る意味が分からない」

「それは俺も分からない」


 3人で首を傾げる。宇海の趣味を変に思っているのは俺だけじゃなかったのか。よかった。


「そこで、シャツの隙間から見えちゃってだな…………」

「そういう経緯だったんですか」

「なるほどな」


 納得したように頷く二人に、俺はもう一つでかいため息を吐く。


「宇海は寝てるし、今までそのことを隠してきてたっぽいし、どう接すればいいかわかんなくてな…………二人に助けを求めた」


 俺が説明を終えると、二人は何やら顔を見合わせ、アイコンタクトで会話をし始めた。お前らいつの間にそんなことできるようになったの? 混ざりたいのに混ざれない。


 俺がシュンとしていると、話し合いが終わったのか、二人がこちらに向き直る。


「頼っていただいたのはありがたいんですが、お話を聞く限り、私たちにできることはなさそうだという結論に至りました」

「面倒だ。陸とアレは友達なんだろう? お互い、腹を割って話したらどうだ」

「え? どういう____」


 俺が疑問の声をあげると、二人の後ろからひょこっと宇海が顔を出した。

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