第2話 覚の悟
「どういう事ですか?」
これは、二人乗りメカに平太郎が乗る一時間前。
小屋の中に入るなり源三と社長と呼ばれるお爺さんとで勝手に話が進んでいた。何を言われるか、平太郎はわかってはいたか念のため疑問を投げかけた。
もちろん思っていた通りの返事が返ってきた。
正直、乗り気ではない。
「源ちゃんと怪獣退治よろしくね。」
しかしお爺さんの返事が何か引っかかる。源ちゃんと、とはどういう事なのだろうか。
この島では怪獣狩りイコール巨大メカだ。その様子は、よくニュースで中継している周知の事実。源三が怪獣を狩るといっていたので自分がメカに乗ることはなんとなく悟っていた。
しかし源三もメカに乗るなんて想像もしていなかった。
「うちのメカがある海岸に行こう。」
「どういう事?じいちゃんも乗るの?」
「お前一人じゃ操縦できねえだろ?」
「そうだけど...。」
「だが、もう乗る気になっているとは!流石は俺の孫だな。」
「だから乗るなんて一言も...。」
平太郎はハッとした。もしここで断ったら喜んでくれた社長のお爺さん達はどう思うだろうか。
じいちゃんになんて言われるだろうか。
断るのが怖い。断るのが辛い。
「乗ってくれないのか?」
だが、源三のその言葉を聞き決意をする。
どうせ家に帰っても投げ出したゲームの画面が待っているだけ。明日が来ても引きこもっているだけ。
いつかは変わらないといけないと思っていた。ならそれが今日だっていい。
「乗るよ。俺、乗る!何でも操縦してやるよ!!」
「その意気だ! って言ってやりたいが、すまん!操縦は、じいちゃんがするんだ。」
耳が真っ赤になる。威勢のいいことを言ってしまった手前、恥ずかしさが込み上げる。
会社の車というワゴン車に乗り込み、平太郎たちはより海に近づく。
海岸すれすれで止まると。
「じゃ、頑張って。」
と運転していた社長のお爺さんに降りるように言われた。
スライドドアをあけると海の匂いが車内に吹き込む。海に目をやると水平線で青黒い海と淡い色の空が綺麗に分かれている。
ここは戦闘許可区。銃火器に兵器に、怪獣を倒す為なら何をやってもいい危険地帯。
狭間島が独立した時代はかなり厳しく審査をしていたのだが、近年の法改正により、規制が緩くなったらしい。
一説には怪獣討伐の志願者が近年、増加傾向にあり役所が手に負えなくなったとか。労働環境の改善とかなんとか。
車から降りた平太郎は、一面コンクリートの海岸に大きな金属の昆虫の様な物を見つけた。
「これ、怪獣?」
「そう怪獣。そして俺たちが乗るメカでもある。」
「これが?」
「二人乗りメカ『ニ・モ』だ。」
平太郎は近づいてみる。
四本足で支えられた銀色の体。上面には六枚の羽根の生えた自動車くらいの大きさの虫。体の至る所に発砲できそうな穴や筒があった。
メカを観察していると、源三の携帯のアラームが鳴る。
「時間だ。乗ろう!」
そう言うと源三は、メカの下に入り込み、底の蓋を開けた。
「ここから入って。」
『ニ・モ』の下から聞えた声は少しの緊張が含まれていた。
平太郎も『ニ・モ』の下に潜り込む。
「これで上がれ。」
小さな脚立を立て掛け、源三は平太郎を後部座席に座らせた。
外見から予想していたよりも機内は狭く、真っ暗だ。
「てか。俺、何すればいいんだよ?」
「ゲームの要領で怪獣を撃ってくれればいいんだ。一応、座席に説明会が置いてあるから不安なら読んどけ。」
源三がエンジンを掛けると次第にメーターやモニターが光を発し、機内の
全貌が明らかになる。
天井には無数のメーター。目の前には大きなモニター画面が現れた。
不意に爆発音がする。モニターに目をやると、映し出せれた海面には均等の間隔で水柱が立っていた。
「獲物がくるぞ!」
源三の声が聞こえると同時に、真紅の体の巨大な「蟹型怪獣」が海上に姿を現した。
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