第38話 試の験
突如として訪れた試験当日。
念の為いつもよりも早く布団に潜った平太郎。
だが、時間が経つに連れ緊張していき実質的な睡眠時間は下手したらいつもよりも少ない。
そんな状態であったが起床してすぐ平太郎は家を出た。
目的地である役所に向かう途中。
コンビニに立ち寄った平太郎はおにぎりを二つ買い、それを朝ごはんにした。
朝食を食べながら商店街を通り過ぎその先の駅も越える。
ほとんど初めて来たといっていいほど見慣れない場所。
そういう場所だからか緊張も強くなる。
携帯の地図アプリで確認しながら右左折。
役所の近くのためか、駅を過ぎた辺りから公共施設がそこかしこに見える。
さらに歩くと、立派な立体駐車場と狭間島第四役所という看板が歩道から伺えた。
広大な敷地に足を踏み入れ近代的な建物に向かう。
自動ドアが開くと中から暖かい空気が流れてきた。
コートを脱いでから受付にいく。
「すいません。メカの操縦試験を受けに来た八島平太郎と申す者ですが。」
「はい。今、確認しますね。」
受付の女性は受付カウンターの奥に広がる執務スペースに行きパソコンを打つ。
数分してその女性が受付に戻ってきた。
「八島平太郎さん。こちらでよろしいでしょうか。」
彼女が手に持つタブレット端末には平太郎の個人の情報が記されている。
「はい。間違いないです。」
「了解しました。ではこちらから右にある待機室でバスをお待ちください。」
バスを待つということはどうやらここは試験会場ではない様子。
「試験ってここでやるんじゃないんですね。」
「そうですね。メカの使用は基本的に戦闘許可区でしか許可されていませんので、八島様には今から戦闘区に行って頂きます。」
「わかりました。」
平太郎は天井に吊るされた案内板に従って待機室に向かった。
ガラス張りのスライドドアを開ける。
室内には成人の男性と女性が数人座っていた。
場違い感を感じながらも椅子に座る。
外に通じる扉がある為か若干待機室内は涼しい。
周りが気になるので平太郎は源三から貰った古い本を鞄から取り出し広げる。
文字を読んでいると不思議と家にいるような気持ちになり、それだけに集中出来た。
半分あたりまで読んでいると一つ席の離れたところに座る男性が声を掛けてきた。
「結構古そうな本だよね。若いのによくこんな物持っているね。」
「ああ。はい。」
「それにしても若いよね。今何歳?」
「15歳です。」
「中学生かぁ。そんな年齢なのに試験受けるんだ。偉いね。」
「そうですかね。」
受け答えしていると、大型車特有のエンジン音が待機室の出入口の前に止まった。
「お待たせしました。」
バスから降りてきたスーツに身を包んだ男性が待機室の人間を誘導する。
バスに乗車するとより場違いな気持ちになる。
なんと乗員の半数以上が外国人。
白人、黒人、日本人を含むアジア人。多種多様な人種を乗せたバスは戦闘許可区に向かった。
長い間バスに揺られていたが、目的地に着いたのか車両は走行を止めた。
窓から外を眺めると戦闘許可区では珍しい大型の建設物が見える。
「到着致しましたのでお降りください。」
人の流れに乗ってバスを降りていく。
少し遠くに見える大きな建物の手前には昆虫型メカ『ニ・モ』によく似た機体が地面に並んでいた。
一同は屋内に移動する。
試験はおおよそ十人ずつやるようで平太郎たちは三組目となった。
最初の十人が外に呼ばれる。
各々が用意されたメカに乗って最初の試験が開始した。
次第に屋内にも昆虫型メカのエンジン音が聞え始め、試験者は皆、窓に食い入るように窓の外を見る。
平太郎もそれにつられて外の風景を見てみる。
とっくに空を駆け回る者。まだ起動すら出来ていない者。慎重に操縦する者。
彼らの姿を見て再度緊張する。
「大丈夫。...大丈夫。」
平太郎はそう自分に言い聞かせ順番を待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます