第19話 ミアという少女2
「まずは、そうだなー……二人との距離感、縮めたいし二人からの質問になんでも一つずつ答えようかな?」
「そんな怖い顔されたら僕もつらいですしー」
目の前に座ったミアは、その言葉通り私たちの警戒心を解こうとしているのか私やラティからの質問を待っている。
と、言ってもミアの視線はラティの方に向いていて私にはそこまで興味はないようだった。
「なら、まずは私からいいか?」
「どうぞー」
話始めてみるとその反応はおおよそ私の予想通りで、ミアとしてはラティからの質問を聞きたかったようで私に対する返事は適当だったがそんなことは無視して話を進める。
次に私はさっきまで張っていた肩の力を抜いて、軽い感じでミアに話しかけた。
「家でのレイがどんな感じか教えてくれないか?」
「……はい?」
「いや、だから家でのレイの様子を知りたいんだよ。あいつとはなんだかんだ長い付き合いだが、あんまり家でのこととかは教えてくんないんだよ」
「でも、レイの専属メイドのお前ならいろいろ知ってると思ってな」
ミアはさっきまでの私との温度差の変わりように驚いているようで口をあけたままぽかんとしている。
一応、外には出さない警戒心を一定のラインで保ったまま解いているわけではないが、あのままの状態で目の前にいる少女から何かを引き出せるものはないと判断した私は目の前にいる少女が持つ距離感と同じ距離感で接することにした。
「何だ、答えられないのか?」
「…いえいえそんなことは……。もちろんお教えしますよ」
「そうだなー。まず、お屋敷でのレイ様は結構甘えんぼで、毎日夕方くらいになったら夜ご飯の時間まで僕に色々と相談事とかしてて~それで最後はいつも僕の胸元で泣いちゃうんですよ」
「……ほう」
「……」
まあ十中八九嘘だろうなと、私は内心そうつぶやく。
話し方というか、なんというか……根拠はないが目の前の少女の持つ胡散臭さとレイという人間の人柄からそれが嘘であると私は思った。
「あ、でも最近は、フィアとのことがひと段落してレイ様もよく寝られるようになったからあんまり呼ばれなくなりましたね」
ガタリと、椅子が揺れる音が私たち以外誰もいない教室に響く。
「あとは…そうですね……」
「あ、あの!!」
そう言って、ミアが続けて口を開こうとしたとき、私の隣に座っていたラティが突然勢いよく立ち上がった。
いつもおとなしいラティがそんな風に感情を表したことに私は動揺したが、言われてみれば自分が好きな人がそういう恋人同士がするようなことを自分のメイドとしているのを聞いてじっとしていられるわけがない。それもこの多感な時期に……、と思い一人、私は納得した。
その時、すぐにラティの方を向いた私だったが、目の前にいるミアが少し口元をゆがませたのを私は視界の端で捉えた。
「きゅ、急に話を遮ってごめんなさい…。でも、ちょっとどうしても、抑えられなくて……」
「いえいえ、お気になさらず。それでどうしたんです?」
「昨日から、ずっと見てて……」
「それで、気になってて……レイラートさんとあなたは、も、もしかしてレイ君の婚約、者だったり、する、んですか?」
喉の奥から絞り出したような声でそう言ったラティは今にも泣きだしそうな顔で、体を小刻みに震わせながら手を胸の前でぎゅっと握りしめたままミアのことを見つめていた。
そして、言われた側のミアはそう聞かれたときの返事を事前に用意していたかのようなスピードで乾いた笑い声の後、言葉を紡いだ。
「……あはは。もしそうならよかったんだけど……でもね」
「そうじゃないよ、ラティちゃん」
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