第6話 添い寝して……



「フィア」


 夜も少し深くなってきたころ、レイは明かりをもってフィアの部屋を訪ねた。


「……どうしたの?」


 ドアが開き、半身を出すようにしてフィアが顔を見せた。

 レイはそこでフィアに対して特別、反応することもなく今まで通りの感じで口を開いた。

 朝の時から自分なりに考えた結果、レイはお見合い前同じように親しい友達としてフィアに接することにした。


「少し、話さない?」


「わかった。入って?」


 レイの行動の意味があったのか、フィアはレイとの話し方を屋敷の中での敬語から学園の昼休みの時間に話すときみたいにほんのり笑顔を浮かべて返事をして中にレイを招いた。


「ここ、座って?」


 フィアの部屋の中は、レイが思っていたより荒れてはいなかった。

 そして、部屋の中にある広めのベッドに腰かけたフィアは自分の横に座るようにレイを呼ぶ。

 レイがそれを避けてフィアの前にある椅子に座ろうとしたら、フィアの顔が朝と同じように暗くなる。

 それを見たレイはミアとの話し合いを思い出し、椅子に座るのをやめフィアの横に腰を掛けた。


「これ、一緒に見よ?」


 そう言って、フィアが自分の後ろから取り出したのは朝に母から聞いたフィアが見続けているというアルバムだった。

 その中には、レイとフィアが制服姿で写っているものやフィアがメイド服で写っているものなど、古いものはレイとフィアが出会って間もないころ写真だった。


「この時はさ……」


 そう言って、一つ一つの写真を指をさしながら当時の思い出を幸せそうに語るフィアのことをその横でレイはじっと静かにそれを聞き続けた。








「……そろそろ、眠くなってきたね」


「……ぇあぁ。そうだね……」


 フィアの持つアルバムの半分を見終えたころ、フィアが横を見るとレイは顔を上下に揺らしながらうとうとしていた。

 そして、少し時間がたって意識を取り戻したレイは、はっとしたようにフィアに返事を返す。


「無理しなくてもいいよ?ほら、横になって……」


 すると、フィアはふふっと笑ってレイの体をそのまま倒すようにして自分のベッドに寝かせ、アルバムを机の上においてから自分にもかぶせるようにして上から布団をかける。


「……あったかいね」


「……」


 すーすーっと寝息がレイの頭のあるあたりから聞こえてきた。


「寝ちゃったの?」


「……」


 もともと、レイは昨日、深く眠れていないのもあって横になった時点ですでに意識を手放していた。

 本当は添い寝をするということだから、レイはフィアが寝た後に部屋を出ていくつもりであった。それはメイドの部屋に主が止まるということはそれはつまりそういうことであるという証明にもなってしまうため、他のメイドに見つからないようにするためにもここで夜をあけるべきではなかった。


「……かわいいなぁ」


 ニヤニヤとレイの寝顔を見るその目はハイライトがなく、暗く濁っていた。

 そしてレイにはわからないからと、自分のしたいようにレイの唇を濡らしレイのことを抱きしめるその女性はとても狂気的な何かを感じられるものだった。


「愛してる」

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